倉敷市真備町は、農業がさかんな地域です。
平成30年7月豪雨による田んぼへの被害も大きく、平成30年度は見込みの半分しか稲の収穫ができなかったとのこと。
土砂や災害ごみが散乱して、荒れた田んぼのようすが報道された平成30年7月豪雨から、約1年3ヵ月。
令和元年10月、黄金色に実った稲穂が風に揺れる風景が広がる、「今」の真備町と井原(いばら)鉄道の列車が走るようすを紹介します。
記載されている内容は、2019年10月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
井原鉄道とは
井原鉄道は、平成11年(1999年)1月11日に営業開始しました。
岡山県総社(そうじゃ)市の「総社駅」から、広島県福山市の「神辺(かんなべ)駅」までの41.7kmを走る鉄道です。
総社から、真備、矢掛(やかげ)、井原、福山までをつなぐ線路の運行時間は、約1時間10分ほど。
岡山県西南部から広島県東部備後地方を結びます。
車窓からの眺めは抜群なんです!
何両も連なっているのではなく、主に1両編成の列車。
のんびり田園風景を楽しめます。
学生や年配のかたが中心に利用しており、真備町に住むひとにとっては生活に密着した鉄道です。
土日祝日には「スーパーホリデーパス」や、第1・第2・第3日曜日の朝は「井原線DE得々市(とくとくいち)」など、お得なチケットやイベントなどもあります。
▼井原鉄道の駅は以下のとおり。
駅名 | 所在地 |
---|---|
総社駅 | 岡山県総社市 |
清音駅(きよねえき) | 岡山県総社市 |
川辺宿駅(かわべじゅくえき) | 岡山県倉敷市真備町 |
吉備真備駅(きびのまきびえき) | 岡山県倉敷市真備町 |
備中呉妹駅(びっちゅうくれせえき) | 岡山県倉敷市真備町 |
三谷駅 | 岡山県小田郡矢掛町 |
矢掛駅 | 岡山県小田郡矢掛町 |
小田駅 | 岡山県小田郡矢掛町 |
早雲の里荏原駅(そううんのさとえばらえき) | 岡山県井原市 |
井原駅 | 岡山県井原市 |
いずえ駅 | 岡山県井原市 |
子守唄の里高屋駅(こもりうたのさとたかやえき) | 岡山県井原市 |
御領駅(ごりょうえき) | 広島県福山市 |
湯野駅(ゆのえき) | 広島県福山市 |
神辺駅(かんなべえき) | 広島県福山市 |
平成30年7月豪雨の発生時、井原線は平成30年7月6日より全線運転不通に。
豪雨後は約2カ月ほどバスなどで代行輸送され、平成30年9月3日より全線運転再開となりました。
筆者は、運転が再開され真備町を井原鉄道が走る「がたん、ごとん」の音で早朝に目が覚めたとき、「日常が戻ってきた」とホッとして涙が溢れそうになりました。
どこまでも広がる田園風景が魅力的。川辺宿駅について
筆者は何度も井原鉄道を利用していますが、高梁川を渡るときに見える車窓からの風景が特にオススメです。
高梁川が太陽の光を浴びてキラキラ輝き、心がホッと癒される景色を車窓から眺められますよ。
真備町の東側にある川辺地区は、高梁川の川辺に位置することから由来する地名です。
川辺周辺は山陽道の宿場町として栄えており、そのことから駅の名前も「川辺宿(かわべじゅく)駅」と名付けられたそうです。
川辺宿駅の北側には、黄金色に揺れる稲穂が広がり、夕焼け時はまさに絶景!
山際に沈む橙(だいだい)色の夕陽と、淡く赤く染まる空、黄金色に輝く稲穂の美しさに、時間を忘れて見とれました。
真備町中心の吉備真備(きびのまきび)駅について
吉備真備駅周辺のようす
吉備真備駅は、真備町を走る井原鉄道の中心の駅です。
真備町名の由来となったといわれる、偉人・吉備真備(きびのまきび)の名前から駅名も由来。
真備町箭田(やた)地区の吉備真備駅のすぐ北には、「ライフタウンまび」や「倉敷市役所真備支所」など、真備地区の中心となる場所に位置する駅です。
吉備真備駅の北側には、中国風の建物があります。
よーく見てみると、「待合・駅前文庫」の看板を発見!
令和元年時点では文庫は置いてないのですが、駅の待合として使われている建物です。
同じ中国風の建物が並ぶ「まきび公園」や「まきび記念館」、「たけのこ茶屋」も、吉備真備駅より徒歩15分ほどで行けますよ。
この待合所周辺では、毎月第2日曜日の朝8時から「日曜朝市」が行われています。
真備町の特産品として有名なタケノコやぶどう(ピオーネ)など、シーズン中に特価品に出合うこともあり、お得です。
名物「筍入りコロッケ」や「真備おこわ」はとてもオススメなので、井原線で訪れてみてはいかがでしょうか?
豪雨の記憶を忘れない。オレンジラインとは
駅の高架下にしるされた、オレンジ色のラインが見えますか?
この「オレンジライン」の高さは、街を西から東へ流れる小田川の堤防の高さと同じ、地上から約5メートルに位置します。
箭田(やた)地区のまちづくり推進協議会のかたが過去の水害の経験をふまえたうえで「最悪のとき、ここまで水が来る」と訴え、平成30年7月豪雨の2年前に塗ったものです。
実際、平成30年7月豪雨ではこの「オレンジライン」まで浸水したとのこと。
令和元年時点では穏やかな風景が広がっていますが、「災害を風化させない取り組みも決して忘れてはならない」と、改めて感じました。
より近くで井原鉄道の列車を眺められるスポット。備中呉瀬(びっちゅうくれせ)駅について
次は、真備町の西側の呉妹(くれせ)地区へ。
真備町を走る井原鉄道はほとんど高架上を走りますが、この路線はほぼ車道と変わらない位置の線路を走るため、より近くに眺められるスポットです。
取材した令和元年10月5日は、ちょうど稲刈りが始まり、コンバイン(稲刈り機)で稲を刈るようすを見られました。
豊かに実った稲穂が垂れ、収穫の時を今か今かと待ちわびています。
これからの秋の行楽シーズン、井原鉄道の電車でのんびり真備町へ訪れて、ゆっくりこの風景を眺め、新鮮な空気を味わってみてはいかがでしょうか。
令和元年7月、井原鉄道から眺める真備町の「今」
井原鉄道の車窓から撮影した真備町の令和元年の「今」を映した動画もあるで、ぜひ見て下さい。
平成30年7月豪雨の爪痕は残っている、けれども復興が少しずつ進んでいるようすが眺められます。
おわりに
この記事は、写真撮影を「第13回倉敷春宵あかり2019」の記事で協力してもらった佐々木敏行さんにお願いしました。
筆者の思いや要望を伝えて撮影をしていただき、出来上がった写真の優しい真備町の光景に思わず胸が熱くなりました。
平成30年7月豪雨直後は、災害ごみの山が続いた井原鉄道の高架下。
今ではたくさんのかたの協力により、真備町は本来の光景を少しずつ取り戻しつつあります。
井原鉄道の列車が走り、「がたんごとん」という音が響く。
そして、まちづくりのかたやボランティアのかたが植えた花壇には季節の花が咲き、田んぼにはたくさんの稲穂が実りました。
令和元年の真備町の秋の美しさが、たくさんのひとに届きますように。