AM倉敷 vol.16 ワタリドリ計画 -絵から旅する 大原⇔岡山- ～ 大原美術館の名画から旅する展示

麻生知子さんと武内明子さんにインタビュー

麻生知子さんと武内明子さんに、話を聞きました。

なぜ日本全国を旅しようと思ったのですか？

麻生

学生のときまで、関東近辺が自分の世界でした。

武内の地元である熊本を訪れたら、景色が全然違って。スーパーで売っているものも電車も、全部違うんですよ！ そういうのにびっくりして。

住んでいる土地以外の場所を見たいなあと思いました。

武内さんはなぜ旅を？

武内

麻生が「旅しよう」って言うから、「いいよ」って(笑)

最初は1年くらいの計画で。ワタリドリ計画は、はじめからプロジェクトとして計画的に始まったものではありません。

麻生

旅がしたい、せっかくなら旅先で絵が描きたい、その土地で展覧会がしたいっていう気持ちではじまりました。

これまではどんな展覧会をしてきましたか？

麻生

「その場所でしかできない展覧会」をしてきました。
たとえば畳敷きの美術館では、ロウケツ染めした座布団ですごろくできるものを作ったり。

武内

土地のかるたを作ったときもありました。

大原美術館での展示が、絵を見て旅先を決める形になったのはなぜですか？

武内

大原美術館には、すばらしい収蔵品があるからです。
この絵を使ってなにかできないかと考えて、旅先を岡山の人に決めてもらう形にしました。

麻生

大原美術館の作品は格式高いからこそ、遠い存在だと思ってしまうかもしれません。

岡山の場所と連想して見ることで、絵に親しみがでてきたり、これまでとは違う感じかたをできたりするかなと思いました。

場所に対しても、例えば、いつもの風景が南フランスって言われると何となくそういう気持ちになるような、新しい見かたができたらいいなあと思っています。

思い入れのある場所はありますか？

麻生

わたしは倉敷市玉島にあるアートスペース遊美工房さんにお世話になっていて、玉島は第二の故郷みたいに大好きな街。

見慣れた玉島が、南フランスだったり安井曾太郎だったりするのが、新鮮で楽しかったです。

今回の制作ならではのことはありますか？

武内

いつもはふたりで決めた旅先に行きますが、今回は教えてくれた人のフィルターを通した、漠然とした目的地があるのが面白くて。

その人も一緒に旅に行っているような感覚でした。

麻生

その人の頭の中を感じながら。

武内

また、自分たちでは行かないようなところに連れて行ってもらえたのが、楽しかったです。
いろいろなものを食べました。千屋牛や素麺を食べたり、いちご狩りしたり。

麻生

ふだんは予約が必要な店には行かないんですけど、素敵なキャンドルレストランでディナーしたり。

教えてもらったことで、旅が豊かになりましたね。

武内

自分自身も画家の気持ちになって景色を探すので、名画に対して親しみがわきました。

展示を見た人の反応はどうですか？

麻生

わかりにくいかなと思っていたのですが、けっこう文字も読んでもらえて理解してもらえて、驚いています。

武内

「自由に見ていいんだなって思った」と言うかたもいました。
何を感じてもいいっていうのはありますよね、自由だから。

麻生

李禹煥を見て、素麺を思い浮かべてもいい。

展示が始まってどう感じていますか？

武内

うれしい、感動しています。

麻生

13人の画家の人たちと一緒に展覧会ができて嬉しいです。

武内

こんな機会無いですからね。

名画と岡山を比べてみよう

「次はどんなところに行くんだろう？」と、旅をしている気分でわくわくしながら鑑賞しました。

名画13点から旅した岡山の28箇所。

岡山をよく知っている人にとっては知っている景色が新鮮に見えるでしょうし、あまり岡山を知らない人にとっては行ってみたい場所が増えるのではないでしょうか。

ぜひ自由な気持ちで名画と岡山を比べてみてください。