倉敷を代表する美術館である、大原美術館。
地元の人にとっては馴染み深い美術館ですが、倉敷美観地区のガイドブックに多く掲載されているほど定番の観光地にもなっています。
「一度は行ってみたい」と思っても、「美術館では、どのように楽しめばいいかわからない」と感じる人もいるかもしれません。
大原美術館では、初心者でも美術鑑賞を楽しめるような企画も行なっています。
その取り組みのひとつとして新たに開催されるのが「演劇型鑑賞ツアー」です。
どのような鑑賞ツアーなのでしょうか。
内容が気になった筆者は、実施に先駆けて行われたモニターツアーに参加してきました。
本記事では、そのようすをレポートしていきます。
記載されている内容は、2023年1月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
大原美術館とは
大原美術館は1930年(昭和5年)に設立された、日本で最初の西洋美術中心の私立美術館です。
本館、分館、工芸・東洋館に分かれており、収蔵点数は約3,000件。
2023年1月現在は、休館日の月曜日を除いて午前9時~午後3時まで開館しています。(開館時間について詳しくは、大原美術館ホームページを確認してください)
また閉館後に「イブニングツアー」(要予約)を行なうなど、鑑賞ツアーを開催しているのも特徴です。
自由に鑑賞しても、十分楽しめる大原美術館。
さらに楽しみたい場合は、鑑賞ツアーに参加するのもおすすめです。
演劇型鑑賞ツアー 解説の合間に役者が登場
演劇型鑑賞ツアーは、大原美術館の従来の鑑賞ツアーとは違い、新たな形で開催されます。
大原美術館の解説員と本館を巡るツアーに、演劇を織り交ぜて行なう70分間のツアーです。
ツアーでは、美術館スタッフによる解説の合間に2人の役者が登場。
扮するのは、大原孫三郎(おおはら まごさぶろう)と児島虎次郎(こじま とらじろう)です。
大原美術館のことを知るうえでは、欠かせない人物を演じます。
語られるのは、大原と児島の出会いや作品収集のエピソードなどです。
そして演じるのは、劇的集団 転機与砲の有賀とういちろう(ありが とういちろう)さんと、岡山劇団SKAT!!の龍(りょう)さん。
2人の趣ある掛け合いによって、大原美術館や収蔵作品のことをより深く知れます。
モニターツアーの参加レポート
筆者が参加したモニターツアーでは、実際の演劇型鑑賞ツアーと同じ流れを体験できました。
印象に残ったことや感想などをレポートしていきます。
なお、ツアー全体の流れや詳しい内容は、ぜひ演劇型鑑賞ツアーに参加して体感してみてください。
大原孫三郎と児島虎次郎の掛け合い
演劇型鑑賞ツアーの見どころは、やはり役者扮する大原孫三郎と児島虎次郎の掛け合いです。
大原美術館の設立当時にもし2人が絵の前にいたら、本当にこのような会話をしていたのかもしれないと思うほどリアルな会話が多くありました。
たとえば、児島の代表作「和服を着たベルギーの少女」の前でのひとコマ。
大原:「ゲントの美術アカデミーに入学してからかな。君の絵が急激に変わったのは」
(中略)
児島:「新しい環境での創作活動は、空気・風土・光、見るものすべてが新鮮で、筆が止まりませんでしたよ」
大原:「そのときの君の代表作が、この『和服を着たベルギーの少女』だったな」
これは、児島の絵の才能を信じていた大原が、児島のヨーロッパ留学を支援したときのエピソードです。
大原は多くの事業をし、“社会から得た利益は、社会へ還す”という信念のもと、金銭的な理由から勉強をしたくてもできない子どもたちを支援していました。
会話を聞いていると、大原と児島の人柄や2人ならではの信頼関係などが垣間見えます。
大原美術館ができた当時にタイムスリップしたかのような気持ちになりました。
きっと、作品に関する紹介文を読んだり、解説を聞いたりするだけでは味わえない体験だったと思います。
大原美術館の解説員による解説
演劇型鑑賞ツアーは、70分間の演劇を観るツアーではありません。
大原美術館の本館1室から5室を移動しながら、解説員による解説が軸となって物語が進みます。
解説員が語るのは、大原と児島が出会ってから大原美術館ができるまでの全体的な時代背景や、作品収集の背景。
役者が演じる一つひとつのエピソードを、ひとつの物語としてつないでいきます。
解説員はナレーションのような存在といえるでしょう。
役者との役割がはっきりと分かれているため、美術館自体の歴史や作品についてをより詳しく理解できました。
70分間のなかには、自由鑑賞の時間も
演劇型鑑賞ツアーは、自由鑑賞の時間も含めて70分間を予定しています。
解説や演劇が終わり、次の展示室に移動するまでの時間は自由に作品を観られるのです。
各作品のエピソードを知ると、作品を身近に感じることもあると思います。
2人のやりとりや解説を思い出しながら、じっくりと鑑賞してみてください。
もちろん、同じ展示室にある作品も合わせて鑑賞できます。
またツアー後には、大原美術館の他の展示室で作品鑑賞するのもおすすめです。
ぜひ時間に余裕を持って、大原美術館での時間を楽しみましょう。
おわりに
演劇型鑑賞ツアーは、作品解説と演劇の両方を楽しめるのが特徴です。
作品一つひとつの時代背景や具体的なエピソードを知ると、作品の印象が今まで以上に強く残りました。
作品の見え方も、少し変わったように思います。
さらにじっくり鑑賞したくなったので、次に大原美術館を訪れる日も楽しみになりました。
モニターツアーでは、大原美術館 業務推進課の石井啓太(いしい けいた)さんがこのような話をしています。
大原美術館としても、新しい鑑賞の仕方をずっと模索していました。
今回のツアーでは、大原美術館を作った2人が出てきて語らうことで、2人が生きていた世界観に入りこんで作品を鑑賞していただけます。
大原美術館をご存知でないかたに、よく知っていただける機会に。
大原美術館を知っているかたにも、より深く知っていただけるようなコンテンツとなりました。
ルーツを知ることで、大原美術館を身近に感じていただけたらと思います。
今後は、実施開催回数を増やしていきたいと考えているそうです。
新しい鑑賞体験ができる演劇型鑑賞ツアー。ぜひ一度、参加してみてください。
大原美術館 演劇型鑑賞ツアーのデータ
名前 | 大原美術館 演劇型鑑賞ツアー |
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期日 | 2023年2月4日(土曜) ・午後6時~午後7時10分 ※開演15分前に本館前にて受付開始。遅くとも5分前には受付に集合。 ※定員は各回20名(予約制・先着順)。定員になり次第、受付終了。 |
場所 | 大原美術館 本館 |
参加費用(税込) | 5,000円(税込) ※当日、現金での支払い。 ※小学生以上は同額。 ※未就学児童は参加不可。 予約は電話かメールを使い、氏名・人数・連絡先・希望回を伝える。 電話:086-422-0005(受付時間午前9時~午後5時) メールアドレス:eigyo@ohara.or.jp |
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