高梁川志塾は、高梁川流域におけるSDGsの達成を目指し、地域活動の中心的役割を担える人材を創出することを目的とした塾です。
2021年6月から2021年9月にかけて高梁川志塾 第2期が行なわれており、高梁川流域で活躍する講師たちによる約30講義が計画されています。
2021年7月3日(土)には、倉敷市児島の特産品であるジーンズについて理解を深める講座として、倉敷市の元地域おこし協力隊の池上 慶行(いけがみ よしゆき)さんによるインディゴ染め・スレン染め体験が行なわれました。
染色体験に参加し、受講生とともに染色について学んできたので、講座の内容を紹介します。
記載されている内容は、2021年7月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
高梁川志塾 第2期のデータ
名前 | 高梁川志塾 第2期 |
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期日 | 高梁川志塾 第2期の期間:2021年6月27日~2021年9月26日 |
場所 | 王子が岳レストハウス |
参加費用(税込) | 詳細は高梁川志塾ホームページを確認。 1.SDGs探求コース受講生 一般 : 12,000円、学生 : 8,000円 (全プログラムヘの当日参加、アーカイブ視聴が可能) ※会場受講・オンライン受講に関わらず一律料金 2.聴講生(座学のみ参加) 会場受講:1,500円/回(人数制限あり) オンライン・アーカイブ受講:500円/回 ※後日参加者のみ閲覧できるページを案内予定。 ※講座によっては、別途、実費を徴収する場合があり。 ※講座によっては、無料公開の場合があり。 |
ホームページ | 高梁川志塾 | 高梁川流域学校 |
高梁川志塾の概要
高梁川志塾は、倉敷市委託事業として一般社団法人高梁川流域学校が運営する、高梁川流域における歴史・文化・産業・フィールドワークなどを通し、地域づくりや、持続可能な地域を担う人材育成、行動につなげることを目指す塾です。
受講コースは、以下の2種類。
- 実習やプレゼンテーションを行なう「SDGs探究コース」
- 座学として任意の講座を受講する「聴講生コース」
2020年11月から2021年2月にかけて高梁川志塾 第1期が開催され、2021年6月からは第2期が始まりました。
開校式が2021年6月27日(日)に行われて、2021年9月26日(日)の修了式までに約30講義が予定されています。
講義の内容は、以下の5種類です。
分類 | 内容 |
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SDGsビジョン編 | 高梁川流域の2030年のビジョンと現状の取り組みを、実際に活動している講師から聞くことのできる講座 |
教養編 | 高梁川流域における、歴史や文化・産業などの知識を得るための講座 |
スキル編 | プレゼンテーション、ITツールの利活用、ブログやSNSの活用など、地域で活動を遂行するうえで必要なスキル・ノウハウを習得する講座 |
ローカルSDGsミッション編 | SDGsの17のゴールを高梁川流域として捉え直して目標設定するワークショップ |
フィールドワーク | 高梁川流域における地域おこしの体験学習 |
第1期では、SDGsビジョン編、教養編、スキル編の3種類でしたが、第2期からローカルSDGsミッション編、フィールドワークが新たに加わりました。
より詳しい内容を知りたいかたは、「⾼梁川志塾」の特設ページを確認してみましょう。
land down under代表 池上 慶行さんの紹介
講師 池上 慶行さんの経歴
講師の池上さんは、資源を循環させて廃棄物を出さないジーンズ作りを目指し、2021年1月にアパレルブランド「land down under(ランド ダウン アンダー)」を立ち上げました。
学生のころから服作りに興味があった池上さんは、地域おこし協力隊として国産ジーンズ発祥の地である倉敷市児島に移住。
地域おこし協力隊として活動し、地元の生産者との関わりや服作りを通じて、製品が大量に生産されては捨てられていく繊維産業の構造に疑問を覚えたそうです。
そこで、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の考えに基づき、素材を再利用することで廃棄物を出さない「循環するジーンズ」を発案。
2021年3月に地域おこし協力隊としての任期を終えて、現在はland down underの事業を通じて、素材を循環させる仕組みや考えかたを世の中に伝える活動を続けています。
講義会場「王子が岳レストハウス」
講義会場は、倉敷市児島唐琴町にある王子が岳レストハウスで行なわれました。
瀬戸内海に面した王子が岳の山頂付近にある倉敷市の休憩施設です。
王子が岳レストハウスからは瀬戸内海の多島美を望むことができ、素晴らしい眺望を楽しむことができます。
講義の前半には施設の1階で座学が行なわれて、後半に屋上で染色体験が行なわれました。
フィールドワークとは?
池上さんは、地域おこし協力隊として倉敷市児島でのフィールドワークを行ない、サーキュラーエコノミーに基づくジーンズ作りの必要性に気がつきました。
あえて具体的な目的を持たずに児島での生活を始めた池上さんは、新たな事業を発掘するために、さまざまな場所へ足を運び情報を集めています。
講義では、池上さんがどのような視点でフィールドワークを行なってきたのかを教えてもらいました。
- 課題を探しに行かない
- 課題を多角的に考える
- フィールドワークに終わりはない
課題を探しに行かない
課題を決めてしまうと、偏った視点で物事を捉えることになり、客観的な立場で考えることが難しくなります。
偏った意見で地域の関係者と接すると、人間関係がうまくいかなくなることも。
課題を決めつけずに中立の立場で情報を集めることが大切だと話してくれました。
課題を多角的に考える
ある人にとっては利益になることも、別の人にとっては課題となることもあります。
例えば、観光地における商店の経営者と近隣の住民。
多くの観光客が街に来ることで商売は繁盛しますが、人で賑わう街の喧騒によって落ち着いた生活が損なわれる可能性もあります。
多くの人の立場になって考えることが課題の本質を見極めるのに重要だと教えてくれました。
フィールドワークに終わりはない
時代の流れとともに必要とされるものは変わります。
何かを理解したということ、わかるということはありえず、観察し続け問い続けることが大切です。
「昨日の常識は、今日の非常識に。昨日の非常識は今日の常識に」の言葉が印象的でした。
インディゴ染め・スレン染め体験のための基礎知識
繊維が染まる理由
体験するのはインディゴ染めと、スレン染めの2種類。
インディゴ染めも、スレン染めも建て染めという染色方法に分類されるそうです。
建てるとはアルカリ性の還元状態にすることを意味しています。
生地に染料を染み込ませたのちに、空気に触れさせて酸化させることで、染料の粒子が不溶性に変化し繊維に付着するそうです。
インディゴ染め
インディゴ染めの特徴は、染料の粒子が大きいことにあります。
粒子が大きいと色落ちしやすくなるため、ジーンズならではの経年変化の味わいを生み出してくれるのです。
インディゴ染めと同じぐらい聞き馴染みのある染色方法として藍染めがあります。
実は、インディゴ染めに使われる染料は石油由来の物質で人工的に製造されたもの。
一方で藍染めに使われる染料は、植物の藍から採れる自然由来の物質です。
どちらも同じ分子構造をもっているそうですが、インディゴ染めは量産が可能でコストを大幅に下げられるため、一般的に販売されているジーンズに使用されています。
藍染めは手間をかけて作られるため、数十万円にもなる藍染めのジーンズがあるそうです。
スレン染め
スレン染めはインディゴ染めとは対照的に、粒子が小さい染料を使います。
一度、繊維の中に付着すると外へ出て行きにくくなるため、インディゴ染めと比較して色落ちしにくいことが特徴。
濡れたり擦れたりしても色落ちしにくいため、作業服によく使われる染色方法です。
瀬戸内地域、児島周辺で得意とする染色方法だと教えてくれました。
染色体験のようす
染料の準備
講義のあとは、王子が岳レストハウスの屋上に上がり、染色体験へ。
受講生たちは、それぞれ白のタオルやシャツを用意しました。
▼インディゴ染めの染料です。
染料は粉末状で保管されているので、水に溶かして使います。
染料の入ったバケツに顔を近づけると、独特の匂いを感じました。
温泉地に漂う硫化水素の腐卵臭を弱くしたような香りがします。
▼生地を浸けるまえの染料のようすです。
染色液が空気に触れている部分には、紫色の膜ができています。
酸化した染料が、染色液の表面に浮いているそうです。
膜の下には固形物はなく、染料が溶けた水溶液のみとなっていました。
▼こちらは、スレン染めの染料です。
染料を生地に馴染ませる
液中で生地を揉むことで染料を染み込ませます。
染色作業を素手で行なうことは危険です。
アルカリ性であるインディゴ染め・スレン染めの染料はタンパク質を溶かす性質があるため、手を保護するためのビニール手袋を身につけて作業しています。
実際、染料が跳ねて腕に付着した箇所は、わずかにですがヒリヒリとした痛みを感じました。
▼ビニール手袋をよく見ると緑色と青色の部分があることが見て取れます。
緑入りの部分は、まだ酸化していない染料の色で、青色の部分は酸化した染料の色です。
▼染料を染み込ませたあとの生地のようすです。
少し緑がかった色をしているように見えました。
微妙な色の違いは、体験でしか得ることができない情報だと思います。
▼次は生地を絞り、余分な染料を落とす工程。
薄い生地だと絞りやすいのですが、ビニール手袋を着けていたためか厚い生地だとかなり絞りにくく感じました。
色むらにもつながるので、しっかりと余分な染料を落とします。
乾燥
絞ったあとの生地のようすです。
バケツの中で浸けていたときは濃い緑色や青色でしたが、染料を絞り落として生地を広げると淡く涼しげな色になりました。
次に、生地を干して染料を酸化させることで繊維に付着させます。
瀬戸内の多島美を背景に、インディゴ染め、スレン染めされた生地が干してある光景は、繊維の街 児島を象徴する景色だと感じました。
すすぎ
約10分間、風にさらしたのちに、水ですすぎます。
すすいだあとは、再び生地は干し直して乾燥。
もっと濃く染めたい場合には、再度染色液につけて、上記の工程を繰り返します。
1週間後の生地のようす
実は、筆者もTシャツにインディゴ染めを施す体験をさせてもらいました。
▼すすいだあとの筆者のTシャツです。
濃い青色に染まっていますが、所々ムラがあるように見えます。
厚手の生地だったため絞るのが難しく、均一に染料を浸透させることができませんでした。
くやしいですが、実際の作業の難しさを知ることも、体験講座ならではの学びです。
Tシャツを自宅に持ち帰り、さらにすすいだのちに乾燥させました。
濃い青色だったものが、薄い青に変化していることに驚かされます。
実際に体験してみると、臭い、触感、色など、講義で話を聞くだけでは分からないことが多くあり、とても勉強になりました。
染色体験をおえて
児島のジーンズについて興味を持つようになってから、インディゴ染めという言葉を目にするようになりました。
生地を青色に染める作業だという知識だけを持っていましたが、実際に体験してみると五感を刺激されて深く記憶に残ります。
鼻に残る独特の臭い、肌に付着した染料によるヒリヒリとした痛み、作業工程や時間とともに変化する染料の色。
五感を通じて得られた情報は、書物やインターネットから得られる情報とは比べものにならないぐらいの刺激があります。
体験による学びが、文章による学びよりも多くの情報が得られることを改めて実感する講義となりました。
また、地域の文化に触れながら、高梁川流域で活躍する講師や受講生たちと交流することができ、とても充実した時間だったと感じています。
五感も、心も満たされたフィールドワークとなりました。
高梁川志塾 第2期のデータ
名前 | 高梁川志塾 第2期 |
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期日 | 高梁川志塾 第2期の期間:2021年6月27日~2021年9月26日 |
場所 | 王子が岳レストハウス |
参加費用(税込) | 詳細は高梁川志塾ホームページを確認。 1.SDGs探求コース受講生 一般 : 12,000円、学生 : 8,000円 (全プログラムヘの当日参加、アーカイブ視聴が可能) ※会場受講・オンライン受講に関わらず一律料金 2.聴講生(座学のみ参加) 会場受講:1,500円/回(人数制限あり) オンライン・アーカイブ受講:500円/回 ※後日参加者のみ閲覧できるページを案内予定。 ※講座によっては、別途、実費を徴収する場合があり。 ※講座によっては、無料公開の場合があり。 |
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