2022年8月5日に、岡山県小田郡矢掛町と株式会社モンベル(以下、「モンベル」と記載)は「アウトドア活動等の促進を通じた地域の活性化と、町民生活の質の向上を目指した包括連携協定」を締結しました。
2026年春に矢掛町にモンベルの直営店がオープンし、さらに新たに整備される「やかげ小田川・嵐山かわまちキャンプ場(仮称)」の指定管理候補者にもモンベルが選ばれています。
オープンまで1年を切った2025年7月、モンベルの辰野勇(たつの いさむ)会長が災害支援活動をテーマにした講演をおこないました。
「モンベル7つのミッション」とはどのようなものでしょうか。講演のようすを紹介します。
記載されている内容は、2025年8月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
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目次
矢掛高等学校 防災教室

矢掛町にある岡山県立矢掛高等学校(以下、「矢掛高校」と記載)では、平成30年7月豪雨をきっかけに毎年1年生を対象に防災教室を開催しています。
今回の防災教室は、矢掛高校の「やかげ学」(矢掛町での地域探究学習)で町役場と連携して活動している生徒が担当し、運営を支えたそうです。
午後1時20分。矢掛高校の1年生と教員、町の関係者など約120人を前に、辰野会長の講演が始まりました。
辰野勇会長の講演「モンベル7つのミッション 〜災害への備え〜」

講演会のプログラムは以下のとおりです。
- 矢掛町長あいさつ
- モンベル 辰野勇会長の講演「モンベル7つのミッション 〜災害への備え〜」
- 「浮クッション」の贈呈式
- 矢掛高校生徒からのお礼の言葉と花束贈呈
- 矢掛高校代表あいさつ
辰野会長の講演は、冒頭で自己紹介をおこない、笛を披露するところから始まりました。

講演内容をピックアップして紹介します。
少年時代と登山への情熱
辰野会長は小学校時代の写真を見せながら、体が弱く学校の集団登山に参加できなかった悔しさを語りました。
その後、高校1年生のときに国語の教科書で出会った、オーストリアの登山家によるスイス・アイガー北壁の初登攀(とうはん)記「白い蜘蛛(くも)」が大きく変えました。

日本人初の登頂者になりたいと考え、アイガー北壁登頂と山に関わる仕事を始めるという二つの夢を持ったと語ります。
- アイガー北壁を登る
- 登山を生業にする
仲間にも恵まれ、1969年に当時の世界最年少記録(21歳)で夢だったアイガー北壁登頂に成功し、その後はカヌーでの冒険などにも挑戦しました。
アウトドアを通じた社会貢献
1975年、28歳の誕生日の翌日に「モンベル」を創業しました。
初年度の売上が1億6,000万円だったモンベルは、順調に成長し、日本を代表するアウトドア用品メーカーとなりました。

1990年代、辰野会長はアウトドアを専門とする会社だからこそ、社会に対してできることがあると気づいたそうです。そのときに掲げたのが「モンベル 7つのミッション」でした。
- 自然環境保全意識の醸成
- 野外活動を通じて子どもたちの生きる力を育む
- 健康寿命の増進
- 自然災害への対応力
- エコツーリズムを通じた地域経済活性化
- 第一次産業(農林水産業)への支援
- 高齢者・障がい者のバリアフリー
これらのミッションは、国の省庁でいえば縦割りになっていますが、アウトドアはそれらを横断的に取り組むことができると説明しました。
災害支援活動

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災での体験を語りました。
発災時は堺市の自宅にいたそうですが、友人の母親の安否確認のため、すぐに被災地へ向かったといいます。
そこから被災者のために寝袋やテントを提供する支援を始めた辰野会長は、災害直後におけるアウトドア用品の重要性を痛感しました。
2011年の東日本大震災でも現地で支援活動にあたりました。
このとき、辰野会長の心に強く残ったのが、津波の犠牲となった石巻市立大川小学校の児童74人のことです。

「ライフジャケットを身につけていれば助かったのではないか」
その気持ちが、「浮クッション(うくっしょん)」の開発につながりました。

「浮クッション」は平時はクッションとして使え、災害時には浮き具として使用できる製品で、意識を失っても仰向けになって呼吸が確保できる設計であることを実演しました。

その後もモンベルは、2016年の熊本地震や2024年の能登半島地震での被災地支援、2020年のコロナ禍での医療者への防護服の無償提供など、さまざまな活動をおこなっています。
好きなことをやりなさい

今回の講演会は高校1年生向けということで、最後に自身の人生哲学として「好きなことをやりなさい」と伝えました。
人間にとって一番大切なのは、いかに生きるか
また、「努力できる人とできない人がいる」という話題に触れ、努力とは好きではないことでも頑張り続ける力で、自分は努力ができないタイプと言いきります。
そして、努力できない自分のような人間は、「正解を求めにいくのではなく、やっていることを正解にしていくタイプ」だと語りました。
モンベルで50年間やってきたことは、自分の好きなことで、結果としてそれを正解にしてきたと、高校生たちに伝え講演は終了しました。
浮クッションの贈呈と高校生の感想

講演終了後には、浮クッションの贈呈式がおこなわれ、平成30年7月豪雨で自身も被災した生徒代表が感想を述べ、講演会は終了しました。

講演を聞いた生徒は以下のように感想を語っていました。
- 日頃から防災対策(避難グッズの用意など)をしっかりとしておきたい
- 講演会などで積極的に質問する勇気を持ち、自分から発言できるように努力したい
- 辰野会長のような行動力を意識し、夢を叶えるために努力していきたい
おわりに

平成30年7月豪雨で支援をしていたとき、アウトドア用品が役立っているシーンを数多く目にしました。
しかし、ものを持っているだけでは弱く、テントを張ること一つとっても「経験」していることが重要であることも同時に感じました。
災害に備えるアウトドア経験を学ぶ場としても、2026年に整備される「やかげ小田川・嵐山かわまちキャンプ場(仮称)」は機能するのかもしれません。
モンベル・矢掛町、そして矢掛高校の「やかげ学」の今後の活動に注目です。
▼矢掛高校・矢掛町の取り組みは以下の記事でも詳しく紹介しています
矢掛高等学校 防災教室「モンベル7つのミッション 〜災害への備え〜」のデータ

名前 | 矢掛高等学校 防災教室「モンベル7つのミッション 〜災害への備え〜」 |
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期日 | 2025年7月10日 午後1時20分〜2時50分 |
場所 | 岡山県小田郡矢掛町矢掛3016-1 |
参加費用(税込) | |
ホームページ | 岡山県立矢掛高等学校「やかげ学」 |