名探偵・金田一耕助(きんだいち こうすけ)を知っていますか?
金田一耕助は、兵庫県出身の推理小説家・横溝正史(よこみぞ せいし)が生み出した名キャラクターの名前です。
金田一耕助シリーズは、何度も映画やドラマ化された人気作品。
倉敷市真備町は、横溝正史が戦時中に疎開した場所であり、ここで「名探偵・金田一耕助」が生み出されました。
平成21年(2009年)より毎年、金田一耕助や横溝正史作品に登場するキャラクターに扮装して、名探偵のふるさとでもある真備町を歩くイベントがあります。
通算1000人目の「金田一耕助」が達成されるかもしれないと注目が集まった、令和元年(2019年)の「コスプレイベント1000人の金田一耕助」。
平成30年7月豪雨から1年4ヶ月経った真備町へ、全国から横溝正史ファンたちが集まりました。
横溝正史ファンのかたと真備町のひとのあたたかい交流と、盛り上がったイベントのようすを紹介します!
記載されている内容は、2019年11月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
- 1 コスプレイベント 1000人の金田一耕助のデータ
- 2 推理小説家・横溝正史とは
- 3 コスプレイベント1000人の金田一耕助について
- 4 第11回「コスプレイベント1000人の金田一耕助」のようす
- 5 清音駅東交流広場:集合から出発式まで
- 6 金田一耕助ゆかりの地を巡るイベントがスタート
- 7 真備町の岡田地区住民による寸劇によるおもてなし
- 8 ついに、1000人目の金田一耕助へ
- 9 「たたりじゃ~!」の名セリフは必見、濃茶のほこら
- 10 名探偵金田一耕助が生まれた、横溝正史疎開宅へ
- 11 獄門島に出てくる「千光寺」の名前のモデルとなったお寺
- 12 岡田大池の近くにあるおりん像へ
- 13 最終地点の「真備ふるさと歴史館(金田一耕助像)」へ
- 14 おわりに
- 15 コスプレイベント 1000人の金田一耕助のデータ
コスプレイベント 1000人の金田一耕助のデータ
名前 | コスプレイベント 1000人の金田一耕助 |
---|---|
期日 | 令和元年(2019年)11月23日 12時30分から午後4時30分まで |
場所 | 真備町岡田地区 |
参加費用(税込) | 500円 |
推理小説家・横溝正史とは
横溝正史(よこみぞ せいし)は、1902年(明治35年)兵庫県生まれ。
1945年(昭和20年)の4月より約3年間、父親の出身地でもある現在の岡山県倉敷市船穂町(ふなおちょう)の近くである、真備町岡田地区へ疎開しました。
横溝は、都会育ちで人と接することが不得意でしたが、気さくに方言で話してくる田舎の人々との交流、人々から聞く言い伝えやうわさ話は、その後の作家生活に多大な影響を及ぼしたそうです。
「金田一耕助」作品は、真備町のひととの交流のなかで生まれました。
名探偵・金田一耕助が初めて登場した作品「本陣殺人事件」は、真備町が舞台です。
コスプレイベント1000人の金田一耕助について
平成21年より毎年開催されている、「コスプレイベント1000人の金田一耕助」。
金田一耕助や横溝正史作品にまつわるキャラクターに扮装(ふんそう)して、ゆかりの地である真備町を歩くイベントです。
イベントが始まった当初は、参加人数も少なかったとのこと。
徐々に全国の横溝正史ファンに知られ、参加人数が増えていきました。
平成30年7月豪雨により、「横溝正史疎開宅」や「ふるさと歴史館」は被害を免れたものの、イベント用の衣装や小道具を保管していた真備公民館岡田分館が浸水。
平成30年の開催は危ぶまれましたが、岡田まちづくり協議会外部会員のかたが、2018年7月20日から「名探偵のふるさと募金(通称:金田一募金)」と題してツイッターで募金を呼びかけました。
匿名や仮名での振り込みでも構いませんと呼びかけたところ、「金田一耕助」や「江戸川乱歩」など名探偵の名前や、横溝正史作品のキャラクターや名ゼリフでの募金が集まったそうです。
全国からのあたたかい支援により、寸劇で使われる衣装や小道具を購入でき、平成30年11月に第10回「コスプレイベント1000人の金田一耕助」が無事開催されました。
イベント開催当初の約3倍、約120人が参加されたそうです。
ちなみに、金田一耕助が小説で始めて登場したのが、11月27日の清音(きよね)駅。
これにちなんで、毎年11月27日に近い土曜日に開催されています。
第11回「コスプレイベント1000人の金田一耕助」のようす
令和元年11月23日に、第11回の「コスプレイベント1000人の金田一耕助」が開催されました。
雲ひとつない青空が広がるなか、初めて金田一耕助が登場した場所、総社(そうじゃ)市の清音駅に、たくさんの横溝正史ファンが集まります。
集合場所は、清音駅東交流広場です。
簡易テントの更衣室も用意されており、それぞれの衣装へと着替えます。
「お久しぶりです」「今回はこのコスプレなんですね!」などの声があがり、参加者同士楽し気です!
▼第11回「コスプレイベント1000人の金田一耕助」のスケジュールは、以下のとおり。
時間 | スケジュール |
---|---|
12時 | 受付開始(清音駅東交流広場) |
12時30分 | 出発式(清音駅東交流広場) |
12時45分 | 出発 |
16時30分 | 解散(真備ふるさと歴史館) |
▼なお、出発後のルートは以下のとおりでした。
- 清音駅
- 川辺橋
- 川辺本陣・脇本陣跡
- 艮(うしとら)御崎神社
- 川辺郵便局
- 岡田新道
- 岡田村役場跡
- 川田屋(一膳飯屋)
- 濃茶のほこら
- 横溝正史疎開宅(横溝正史像)
- 千光寺
- 岡田大池(おりん像)
- 真備ふるさと歴史館(金田一耕助像)
清音駅東交流広場:集合から出発式まで
20代女性から年配の男性ファンまで、年齢問わずたくさんの参加者が集まりました。
イベントのナビゲーターは、岡山県の金田一博士として知られる網本善光(あみもと よしみつ)さん。
「今回のイベント参加者は、過去最大の143人!毎年、右肩あがりで参加者が増えてます」と網本さん。
「せっかくなので、金田一耕助のコスプレをしたひと、集まってください!」という網本さんの言葉に、金田一耕助の衣装を着たひとびとが集まります。
それぞれ衣装や恰好も違うのことに気づきましたか? ドラマや映画で異なる俳優さんが演じてきたので、違いがあるんです。
「真備町大好き」の手作りうちわを持参された金田一コスチュームのかたは、長崎県から来られたとのこと。
東京都、愛知県名古屋市、大阪府と、さまざまな地域からたくさんのファンが集まり、なごやかな雰囲気で出発式がスタートしました。
イベントの実行委員長・守屋弘志(もりや ひろし)さんも、金田一耕助の衣装で登場です。
「遠方よりようこそ、真備町へ! 道中では、岡田地区のかたが登場人物に扮(ふん)して、寸劇などでお迎えします。 真備町は1日も早く復興できるようがんばりますので、引き続きご支援よろしくお願いします」
と、あいさつされました。
その後「金田一耕助と八つ墓村チーム」、「それ以外の作品チーム」の2チームに分かれて、清音駅前で記念撮影。
まずは、金田一耕助と八つ墓村作品の登場人物で記念撮影です。
写真を撮るときの合言葉は、「金田一!」
次は、金田一耕助と八つ墓村作品以外の登場人物のチームです。
白いマスクの「佐清(スケキヨ)」など、インパクトのある面々が勢ぞろい!
偶然、清音駅を利用したかたもビックリされてましたよ。
金田一耕助ゆかりの地を巡るイベントがスタート
清音駅から最終地点の「真備ふるさと歴史館」まで、約5キロの旅がスタートしました。
総社市と倉敷市真備町を結ぶ「川辺橋」へと向かいます。
イベント当日は、秋とは思えないほど気温が高かったため、汗を流しながら歩きました。
川辺橋から見える高梁(たかはし)川がキラキラ輝き、秋の空気を吸いながらの歩きは気持ちがよく、「来てよかったです」という声も聞こえます。
ぞろぞろとコスチュームを着て歩く姿は、この日だけの特別な光景です。
真備町の岡田地区住民による寸劇によるおもてなし
真備町の旧山陽道へと入り、真備町が舞台となった作品「本陣殺人事件」の一場面へ。
真備町地元住民のかたたちが物語の場面を演じる寸劇は、「本陣殺人事件」の一部を忠実に再現!
アドリブで笑いをとるなど、終始なごやかな雰囲気です。
「第一回目のイベントでは、実はシークレットで寸劇が始まったんですよ」と網本さんがお話してくれました。
途中では真備町の住民のかたが、「真備に来てくれてありがとう。私たちもがんばるからね」と参加者に声をかける一場面も。
川辺郵便局は、平成30年7月豪雨による浸水のため取り壊され、更地となっていました。
▲艮御崎(うしとらおんざき)神社では、黄色や赤の紅葉が美しい秋の光景です。
▲一休みされていた「本陣殺人事件」の鍵を握る登場人物、岡田地区のかたが演じた「三本指の男」さん。
道中、川辺地区や岡田地区の住民のかたが、自宅のまえで参加者に手を振ったり「がんばってください」と声をかけたりする姿が印象的でした。
そして、岡田新道を通り岡田村役場跡へと到着。
目的地の「横溝正史疎開宅」まで、あと500メートルです。
ついに、1000人目の金田一耕助へ
めしや「川田屋」の寸劇が始まりました。
イベントが始まった平成21年時は、不慣れなため演技もまだまだだったようですが、回を重ねるごとに本当の役者さんかと思うくらい上達されていったそうです。
次に、金田一耕助の恰好をされたかたが登場。
たどたどしい言葉遣いや、頭をかくクセなどを忠実に演技され、みごとに金田一耕助になりきっていました。
あれ、この声は聞いたことがあるような?
金田一耕助の衣装に身を包んだ、伊東香織倉敷市長でした!
川田屋のおかみさんの、
「真備町は昨年(平成30年7月豪雨)でこの辺りまで水がきました。
でもなぁ、大変じゃ、大変じゃいつまでも言(ゆ)うとってもいけん。
たくさんのかたが来て下さっとるけん、がんばらんといけん」
という前向きなセリフに、あたたかい拍手がおきました。
そして、伊藤市長より「なんと今回、通算1000人目の金田一耕助がこの中にいます!」と発表がありました。
兵庫県から参加された女性のかたが、1000人目の金田一耕助として名前を呼ばれました。
「獄門島」に出てくる釣鐘に見立てたくす玉を引っ張ると…、
「祝・1000人目の金田一耕助!」の垂れ幕が釣鐘から現れました!
▲実行委員長の守屋弘志さんと、1000人目の金田一耕助による記念撮影。
寸劇をされた岡田地区の住民のかたと参加者で記念撮影もしましたよ。
みなさんとってもいい笑顔ですね!
「たたりじゃ~!」の名セリフは必見、濃茶のほこら
横溝正史疎開宅より南に約30メートルほどの場所に、「濃い茶のばあさん」と呼ばれている祠(ほこら)があります。
この祠は「八つ墓村」に登場し、「たたりじゃ~」と叫んだ「濃茶の尼」の名前の由来となったといわれているんです。
「たたりじゃ~!よそものはかえれ、かえれ!」と叫びながら、「濃茶の尼」が鎌をふりかざしながら走ってきました!
手厚い地元住民からの歓迎に、みなさん大変喜ばれていましたよ。
名探偵金田一耕助が生まれた、横溝正史疎開宅へ
近所のかたが出迎えるなか、「横溝正史疎開宅」へ到着しました。
あたたかい甘酒が振る舞われ、会場はにぎわいます。
箏(こと)の調べに耳を傾けながら庭を眺めていると、「ほっ」と癒されました。
当時の面影を残した庭を眺めながら、横溝正史もこの庭を眺め作品を執筆した、約70年前へと思いを巡らませます。
獄門島に出てくる「千光寺」の名前のモデルとなったお寺
横溝正史疎開宅の、向かって右の細い道を進むとお墓が見えてきます。
上り坂をのぼった場所が千光寺です。
お寺の住職さんも「ようこそ」と迎えてくれました。
岡田大池の近くにあるおりん像へ
岡田大池は、疎開宅の近くにあります。
横溝正史は小説にいき詰まると、この岡田大池のまわりを散歩していたそうです。
横溝は伸びた髪をかきむしりながら、ぶつぶつと独り言をいいながら歩いていたといわれています。
その近くには、「悪魔の手毬唄」の鍵となる人物「おりん」の像。
地元住民による「おりん」さんの寸劇が披露され、おりんさんの衣装を着たかたと「おりん像」の3ショットに盛り上がりました。
最終地点の「真備ふるさと歴史館(金田一耕助像)」へ
「真備ふるさと歴史館」の前では、おにぎりやぜんざい、あたたかいお茶がふるまわれました。
地元住民のかたたちがあたたかく出迎えてくれます。
真備町特産の竹の子の水煮なども販売され、購入する参加者のかたもいました。
金田一のマスキングテープや、トートバッグなどのオリジナルグッズも販売。
最後は岡田地区のかたも集合して、あいさつをされました。
「本日はこんなに多くのかたが集まってくださり、涙がでるほど嬉しかったです」
全国各地から集まった横溝正史ファンのかたに、とてもはげまされたとのこと。
「横溝正史作品」を愛するファンの思いがこもったイベントは、秋深まる真備町で大盛況ののち幕を閉じました。
おわりに
横溝正史ファンが訪れ、真備町のひとたちのおもてなしに、心あたたまり癒された令和元年に開催された「第11回・コスプレイベント1000人の金田一耕助」。
訪れる参加者の第2のふるさととなり、毎年訪れたくなる魅力がつまっていると筆者は感じました。
改めて真備町のひとたちのあたたかさや、参加者の「横溝正史作品」を愛する気持ちが伝わってきた今回のイベント。
取材を忘れ、筆者もすっかり楽しんでしまいました。
もっと多くのひとにこのイベントの魅力を知ってもらい、真備町へ来てもらうきっかけになればと思います。
金田一耕助のふるさと「真備町」へ、足を運んでみませんか?
コスプレイベント 1000人の金田一耕助のデータ
名前 | コスプレイベント 1000人の金田一耕助 |
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期日 | 令和元年(2019年)11月23日 12時30分から午後4時30分まで |
場所 | 真備町岡田地区 |
参加費用(税込) | 500円 |