倉敷ひまわり号明石の旅の旅乗車レポート(2026年5月24日開催)~ 全国でも数少ない障がい者専用貸切団体列車の旅

降車する参加者

医療的ケアが必要で車椅子を使っている人、視覚障がいがあって初めての場所を歩くにはガイドヘルプ(介助)が必要な人、聴覚障がいがあってツアーのアナウンスが聞こえない人……。

このように障がいがある人たちも、旅をする楽しみや高揚感を味わいたいと思っています。

2026年も障がい者と医療・福祉の専門家、ボランティアが共に貸切列車で日帰り旅行を楽しむ観光列車「倉敷ひまわり号」が、JR倉敷駅から兵庫県明石市へ向けて運行されたので、同行しました。

記載されている内容は、2026年7月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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倉敷ひまわり号明石の旅とは

出発セレモニーの様子

ひまわり号は、1982年に東京で始まった障がい者専用の貸切団体列車です。

当時は、列車や駅のバリアフリーが現在ほど普及しておらず、障がい者にとって列車に乗って旅することには多くの困難がありました。

そのような中、障がい者やその家族・ボランティア・労働組合が中心となって「ひまわり号」の運行が始まり、全国に普及。倉敷市では、1985年に初めてのひまわり号が倉敷駅から広島駅間で運行されました。

倉敷ひまわり号の乗客は、主に倉敷市内に在住・在勤・在学の障がい者とその家族、そして居住地を問わず旅の趣旨に賛同するボランティアです。運行当初から「障がいのあるなしにかかわらず、参加者は共生社会の一員」という考えのもと、障がい者もボランティアも同額の参加費を払って乗車します。

車内の様子

2026年は障がい者54名・障がい者の家族12名・介助ボランティア99名・その他医療スタッフなど総勢239名が乗車しました。

2025年は広島県尾道市へ向かった倉敷ひまわり号。39回目の運行となる今年は、兵庫県明石市が目的地です。

しおり表紙

当日の様子

明石城跡

倉敷ひまわり号明石の旅の運行当日は、数日前から雨の予報でしたが、当日は気温が30度近くまで上がる晴天となりました。

障がいのある人たちにとって、ひまわり号は年に一度の大イベントです。
障がいの程度により医療的なケアが必要な参加者や、電動車椅子での移動が難しい参加者の中には、ひまわり号が唯一の旅の機会となる人もいます。

乗車の様子

当日の行程は、以下のとおりでした。

倉敷ひまわり号明石の旅 行程
  • 午前8時10分:出発セレモニー
  • 午前9時8分:倉敷駅出発
  • 午前11時53分:明石駅到着
  • 正午〜
    兵庫県立明石公園または明石商工会議所にて昼食
    明石駅周辺散策(明石市立文化博物館、魚の棚商店街など)
  • 午後3時18分:明石駅出発
  • 午後5時51分:倉敷駅到着・解散

JR倉敷駅から盛大な見送りを受けて出発

出発セレモニー

倉敷ひまわり号は毎年、倉敷駅北口2階にあるいこいの広場で、岡山県で最も歴史のある倉敷市消防音楽隊の演奏などを行う出発セレモニーを開催します。

受付の様子
バッジ

受付を済ませ、福祉事業所の方が一針ずつ丁寧に縫い上げたオリジナルバッジを受け取ると、障がい者1名に対して2〜3名の介助ボランティアで構成されたグループごとに出発セレモニーを見守ります。

セレモニーを見る参加者

倉敷市長やJR倉敷駅の駅長なども駆けつけ、旅の開催を祝福しました。市長はホームまで下りて見送り、駅長は旅にも同行して安全な運行を支えました。

倉敷市長
倉敷市長
車内であいさつするJR倉敷駅長
車内であいさつするJR倉敷駅長

多くの人の目に触れながら、明石と倉敷を往復

車内へ移動する参加者
車内へ移動する参加者
車内へ移動する参加者

セレモニーが終わると、それぞれのペースでホームへと向かいます。

2025年までは国鉄型車両が採用されていましたが、今年からは新型のUrara(うらら)に変更されました。ホームと車体の段差が低くなったため、車椅子や歩行が困難な参加者がより安全に乗車できます。

Urara
Urara
車椅子乗降用スロープ
車椅子乗降用スロープ

また、車内には広々とした多機能トイレも設置されているため、介助が必要な人も車内でトイレを利用しやすくなりました。ただ、トイレが設置されているのは一部の車両のみのため、未設置の車両には例年どおり実行委員が簡易トイレを設置します。

車内に設置されている多機能トイレ
車内に設置されている多機能トイレ
実行委員が設置した簡易トイレ
実行委員が設置した簡易トイレ

車椅子から電車へ移乗できる人は座席に、バギーや車椅子のまま乗車する人は介助者と会話しやすいロングシートを使用するなど、ニーズにあった乗車スタイルで出発します。

車椅子から移乗してボックスシートに座る参加者
車椅子から移乗してボックスシートに座る参加者
車椅子のまま乗車し、家族がロングシートを使用した参加者
車椅子のまま乗車し、家族がロングシートを使用した参加者

倉敷駅から明石駅までは貸切列車とはいえ鈍行なので2時間半ほどの列車の旅となります。しかし、参加者の多くが観光だけでなく電車に乗ることを含む「旅そのもの」を楽しみに参加しているので、ずっとにぎやかな声が響きます。

車内では歌や腹話術などのレクリエーションが用意され、楽しみが目白押しです。明石駅前にある魚の棚商店街で使える明石焼きやたこせんべいが当たるじゃんけんゲームも開催され、観光をより楽しむために白熱したゲームが繰り広げられました。

じゃんけんゲーム
じゃんけんで明石焼きの引換券をゲット
じゃんけんで明石焼きの引換券をゲット
腹話術を楽しむ
腹話術を楽しむ

途中、運転間隔の調整で何度か停車した際には、停車駅の電光掲示板に「ひまわり号」と表示され、各地の駅で注目の的になりました。

また、現在は姫路駅以西でのみ運行しているUraraが明石駅まで乗り入れる珍しい機会とあって、写真を撮りに来た一般客ともホームですれ違いました。

Uraraを撮影しにきた一般客
Uraraを撮影しにきた一般客

「あの電車なんだろう?」「ひまわり号には、車椅子がたくさん乗っているな!」など、目にした人たちの気づきにつながり、障がいのある人たちも旅を楽しむことをより多くの人に知ってもらうきっかけになったのではないでしょうか。

岡山駅三番ホームの電光掲示板
岡山駅三番ホームの電光掲示板

「せっかく明石に来たのだから!」めいっぱい散策を

昼食を楽しむ参加者

電車の乗降にも時間がかかるため、明石での散策時間はお弁当の時間を含めて2時間半ほど。

実行委員はお弁当を食べて、明石駅前にある魚の棚商店街で食べ歩きやお土産の購入をするゆったりとした行程を想定していました。

しかし、魚の棚商店街で実行委員が待てども待てども参加者はなかなかやってきません。なんと、参加者の多くが兵庫県立明石公園内をぐるりと散策し、さらにそこから坂を登った先にある明石市立文化博物館へと足を運んでいたのです。

兵庫県立明石公園のバラ園
兵庫県立明石公園のバラ園
明石市立文化博物館へ向かう坂道
明石市立文化博物館へ向かう坂道

明石市文化博物館で出会った車椅子ユーザーの方は「せっかく明石まで来たのだから、たくさんの場所に足を運んでみたいじゃない」と教えてくれました。館内は冷房も効いていて、坂道を登り切った後少し休憩を挟んで、展示をじっくりと眺める姿がありました。

展示を鑑賞する参加者

また、視覚障がいのある参加者は「ガイドヘルプしてくださる人と一緒だから、初めての街を歩くのも楽しい。明石は点字ブロックもしっかりと整備されているからさらに歩きやすいと感じる」と、教えてくれました。

介助ボランティアと歩く視覚障がい者

移動が困難だから旅を諦めがちな人たちも、健常者と同じように旅を楽しみたい気持ちはあります。倉敷ひまわり号は、以下のようにさまざまなボランティアが参加しています。

  • 介助ボランティア
    車椅子利用者や目の不自由な方と一日一緒に旅を楽しむ
  • 設営ボランティア
    車内の仮設トイレやベッド、おむつ交換所などを設置。朝早くから最後まで参加必須
  • レクボランティア
    歌や腹話術、人形劇、紙芝居など、得意なレクリエーションで楽しく和やかな雰囲気を作る
  • 記録ボランティア
    当日の様子を写真などにおさめ、後日記録集として作成

そのほかに医師や看護師による医療班も同行しているため、持病や移動に困難があっても安心して旅に参加できるのです。

医療班

兵庫県立明石公園や明石市立文化博物館の観光を終えた参加者たちは午後2時頃には魚の棚商店街を通過し、車内レクリエーションで獲得した明石焼きやたこせんべいを引き換えながら、お土産を購入してJR明石駅へと戻りました。

明石焼きを食べる

支える側の笑顔が多く見られた一日

障がいのある当事者だけでなく、ボランティアや医療班など旅を支える人たちも多く乗る倉敷ひまわり号。

昨年(2025年)は運行前日の土曜日が雨だったため、倉敷市立小学校の運動会が順延となって小学生ボランティアの参加が少なめでしたが、今年は小学生ボランティアが多数乗車しました。

くす玉を割る小学生ボランティア
くす玉を割る小学生ボランティア

小学生ボランティアは、保護者とペアで障がいのある参加者とグループを組みます。最初は緊張している様子でしたが、車内で発車を祝うくす玉割りを担当したり他の参加者とレクリエーションに参加したりしながら少しずつ緊張をほぐして明石に到着しました。

明石に到着してからは保護者が見守る中、小学生ボランティアも車椅子を押したりお土産の購入を手伝ったりと大活躍。

降車の介助

倉敷駅に戻って解散するときには、障がいのある参加者も小学生ボランティアも名残惜しそうにお別れを惜しむ姿がありました。

また、高等学校や大学単位での参加もありました。倉敷市内からは、岡山県立倉敷鷲羽高等学校の生徒が数名参加。介助ボランティアだけでなく、車内のレクリエーションでも活躍しました。

レクリエーション

障がいのある当事者は、普段触れ合う人が家族や通所先、病院のスタッフなど固定しがちです。一方で、子どもたちも普段の生活で障がい者を目にする機会はあっても実際に障がいのある人と密にコミュニケーションをする機会はめったにありません。

障がいのある当事者、ボランティアとして参加する子どもたちの双方にとって、共生社会を体験できるきっかけの一日になったことでしょう。

魚の棚商店街
魚の棚商店街

おわりに

倉敷駅で見送ってくれた家族が、帰りも倉敷駅へ迎えにやってきます。

ボランティアが家族へ一日の流れを細かく説明しようとすると、多くのご家族が「楽しかったんだなというのが、顔を見ればよくわかります。ありがとう」と障がいのある当事者と同じくらい満面の笑みを浮かべて帰路に就く姿が多く見られました。

解散時の様子
解散時の様子

その後ろ姿を見送ったボランティアたちも「楽しかったね」と達成感に満ちた表情でまた帰路に着きます。

2000年頃までは全国各地で運行していたひまわり号も、現在貸切列車を活用して運行しているのは倉敷のみとなりました。「障がい者の列車で旅をしてみたい」だけでなく、障がいの有無にかかわらず毎年参加する人たちの居場所となっている倉敷ひまわり号。

今後も残していきたい取り組みの一つです。

倉敷ひまわり号明石の旅のデータ

しおり表紙
名前倉敷ひまわり号明石の旅
開催日2026年5月24日(日)
午前7時50分〜午後6時
場所JR倉敷駅出発
参加費用(税込)4,000円
ホームページ倉敷ひまわり号を走らせる実行委員会

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高石真梨子
高石真梨子
東北→九州→近畿→関東を経て、2023年12月に倉敷市地域おこし協力隊になりました。

音の世界と音のない世界の狭間に住んでいる、手話と日本語のバイリンガルです。障がいの有無にかかわらず、倉敷を旅して倉敷に住み続けたくなるような情報を発信していきます。

こんにちは、地域おこし協力隊です

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