水口智貴さんインタビュー
インタビューは2019年7月の初回取材時に行なった内容を掲載しています。
IGUSA GLASSの開発で苦労したことはなんですか?
水口
ガラスで新たに色を作るのは、けっこう大変なんです。
それでも「他でできないことをやろう」という思いで、投資し炉を設計し直し、1年以上実験を繰り返しました。
薬品がかったような見た目になってしまって、熔かしても熔かしても廃棄するしかなかった時期もあります。新しい取り組みなので、相談できる相手もいません。
い草の燃やし方や燃やす道具、配合なども手さぐりでやってきて、ようやく安定して作れるようになりました。
こだわりを教えてください
水口
IGUSA GLASSは価格を抑えていますが、作品の精度は厳しい基準で見ています。
シャープなイメージを目指していて、かっこいいことに重きをおいてやっていますね。
吹きガラスは、薄いものほど作るのが難しいんです。でも、たとえばコップは薄いほうが味を邪魔しないといわれますし、僕自身がコップを選ぶとしたら絶対口の薄いものを使いたい。
気に入らないものは、売りたくない。妥協したくなくて、厚みや全体の重さなど厳しくチェックしています。
水口さんにとって、IGUSA GLASSはどんな製品ですか?
水口
IGUSA GLASSは、僕の作品としてではなく、工房の製品として制作しています。僕も作るし、スタッフも作る。サインも入れていません。
ゆくゆくは、他の工房にも作ってもらうことを考えています。
他の工房に?
水口
吹きガラス工房は、ガラスを熔かす窯を維持するだけで月何十万もかかるんです。ずっと火を絶やせないので。
僕が工房を始めたのは25歳のときだったんですが、販売ルートもないし、個展させてもらえるギャラリーも少ないし、お金だけは飛んでいくし。
立ち上げはできても、維持するのが難しいんですよ。
毎日作っても、それが売上になるかはわからない。
でも注文品があって、その分は作ったらお金になるというパターンができれば、全然違います。僕が工房を始めたときは、正直それがめちゃくちゃほしかったです。
IGUSA GLASSを他の工房に注文できるようになって、若手の人が独立するときの手助けになる商品にできたら、嬉しいと思います。
のちのち、ですけど。まずは、IGUSA GLASSの売り場所を増やしていきたいです。
倉敷の特産品として、認めてもらえるようになればと思います。さらに、岡山のガラス、日本のガラス、となっていけば面白いですけどね。
吹きガラス作家ってどんな仕事なのでしょう?
水口
仕事内容としては、めちゃくちゃきついです。
不安だらけですし、お金にはならないし、夏はすごく暑いし、休みもありません。
倒れる寸前まで仕事をしますから、人には「やめたほうがいいよ」って言いますね(笑)。
吹きガラスを仕事にしてみたいという人でも、1週間きつい仕事を体験したら、ほとんどは続きません。それでもやりたいって人は続けられると思います。
僕はものづくりが好きなので、制作は苦になりません。
でも、売るのは難しいし下手ですね。役割分担して、売るプロに任せるのを軸にしています。
平成30年7月豪雨災害の際には、寄付を募ったと聞きました。
水口
実はここの工房も、7~8年前に台風による川の氾濫で膝下くらいまで水没したんです。1ヶ月半、営業停止しました。
その時に助けてくれたのが、作家仲間でした。知らない間に募金を始めてくれてて、お金をまとめて持ってきてくれて。助けてもらったおかげで、今があります。
平成30年7月豪雨災害では、知り合いも、あるガラス工房も被災しました。真備以外でも大きな被害があって。
近所の土砂崩れ現場や真備で作業手伝いもしましたが、「他にもなにかできないか」とガラス工房と自営業の友人にむけての募金をスタートして、渡しました。
協力してくださる方が多くて、ありがたかったです。
最後に、今後の目標を教えてください。
水口
IGUSA GLASSのラインナップは、一輪挿しや小鉢も検討しています。ウエディング関係のものもできたらと考えています。
余裕ができたら、照明をつくろうかなと。ガラスでこういう色だから、光を当てるときれいに見えるので。
い草を織ったものと合わせられないかなと想像しています。製品の一部として、い草製品と組み合わせて作りたいですね。
自身としては、美術品やオブジェのような作品に力を入れていきたいです。
おわりに
これまで、IGUSA GLASSや、水口さんの作品を見て、かっこよくてきれいだなあと思ってきたので、工房を訪れるのが楽しみでした。
1,000度を超える炉から出てきたばかりの、どろっとした真っ赤なガラスには、神秘的なパワーを感じます。熔けたガラスが固まるまでの短時間で、手早くも丁寧に作品を形作っていくさまは、感動的!
撮影用に作品をお借りしたところ、美しさに撮影の手を止めて見入ってしまいました。
ぜひ実物を手にとって、光にかざしてみたり、影の模様を眺めたりしてみてください。
ぐらすたTOMOのデータ
名前 | ぐらすたTOMO |
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住所 | 岡山県倉敷市広江2-13-33 |
電話番号 | 080-1945-6046 |
駐車場 | あり 事前連絡が必要 |
営業時間 | 午前10時30分~午後7時 電話受付は9時30分~午後8時まで (作業中・展示会などで電話に出ない場合あり) |
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