都市圏から地方に移住し、まちづくりや地域振興の活動をおこなう地域おこし協力隊という仕事があります。総務省のデータによると、2023年度の地域おこし協力隊の人数は過去最多の7,200名だったそうです。
かくいう筆者も、地域おこし協力隊として2023年に神奈川県から倉敷へ移住したひとりです。活動するなかで、地域おこし協力隊という仕事がまだまだ知名度が低いことに気が付きました。
地域おこし協力隊は地域の人たちとの連携が必要不可欠。少しでも多くの人に協力隊の存在を知ってもらうべく、協力隊の活動を紹介します。
紹介するのは、現役隊員の宮崎菜央(みやざき なお)さん。活動内容とともに、地域への想いを取材しました。
記載されている内容は、2025年3月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
地域おこし協力隊とは
地域おこし協力隊は、都市地域から過疎化に悩む地域へ移住し、その地域の協力活動をおこなう国の取組です。
地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です
一口に協力隊といえども、自治体から各隊員に与えられるミッション(依頼内容)は違うため、活動内容や働く場所もそれぞれまったく異なります。しかし、どの隊員にも共通しているのはすべての活動が倉敷の活性化につながること。
どのような人が地域おこし協力隊となり、どのような活動をし、そして任期終了後にどのような未来を歩んでいくのでしょうか。
宮崎菜央さんについて
宮崎さんは兵庫県姫路市出身。2023年4月に倉敷市地域おこし協力隊として着任しました。

地域おこし協力隊になった経緯

宮崎さんは、20歳のときに一人旅で広島県尾道市に訪れたことをきっかけに、「どこかに移住してみたい」という想いが生まれたと話します。
前職は、地元の兵庫県で栄養士の資格を活かして、保育園や児童養護施設の給食運営に携わっていました。しかし体調を崩してしまい、転職を考えます。
もともと移住に興味を持っていたこともあり、移住先を検討するなかで倉敷市と出会いました。倉敷は以前旅行で訪れたことがあったそう。地元の兵庫県からちょうど良い距離に位置し、また和の文化や雰囲気が好きな宮崎さんにとって、美観地区あたりの町並みは魅力的に感じられたそうです。

そのときにちょうど見つけたのが、現在の地域おこし協力隊の募集でした。ミッションの内容は「地域資源である倉敷薄荷を活かしたまちづくり」。
当時、宮崎さんが特に関心を持ったのは、倉敷薄荷(くらしきはっか)を使った商品開発でした。前職時代、行事食や園内イベントでの食事提供メニューを企画した経験もあり、アイデアを形にする業務に惹かれます。

採用面接の前に活動拠点となる倉敷薄荷陳列所に足を運んだ際、ゆったりとした倉敷の町の雰囲気に魅了され「あ、倉敷いいかも」と思ったそうです。
活動紹介
宮崎さんは、地域おこし協力隊としての活動と、地域と交流する活動を個人でおこなっています。
- 倉敷薄荷陳列所の運営(協力隊活動)
- 子ども向け料理教室「シェフ☆きっず」の運営(個人活動)
- 「栄養士ミヤの夜カフェ」の開催(個人活動)
1.倉敷薄荷陳列所の運営(協力隊活動)

宮崎さんの協力隊としてのミッションは、特産品である「秀美(しゅうび)」という品種のハッカを活用したまちづくり。具体的には、合同会社吉備のくに未来計画が運営する倉敷薄荷陳列所にて、以下の業務をおこなっています。
- 倉敷薄荷陳列所に訪れたお客さんへの接客
- 新商品の開発や企業とのコラボレーション対応
- 「倉敷薄荷だより」の制作や、卸業務や発注手続きなどにともなう事務対応
- 倉敷薄荷の魅力を伝えるSNSの情報発信
- イベント出店などを通じた倉敷薄荷のPR活動
宮崎さんが特に力を入れたのは新商品の開発。倉敷薄荷陳列所では、もともとアロマミストやアロマオイルを販売していましたが、お客さんから「他にありませんか?」と別商品を求められることも多かったそうです。
そこで、カルディコーヒーファームのマーケティングや商品開発を参考にして、まずはOEMの製造委託に目を付けました。試行錯誤しながら新商品を開発し、現在はお土産にもぴったりなハッカ飴や、美容師監修のヘアミストやオーガニックバームなども販売しています。

2025年3月現在、宮崎さんに新商品について質問したところ、なんば牧場とコラボレーションしたカップアイスのハッカチョコ味を準備中だそうです。
倉敷薄荷陳列所のInstagramでは、商品紹介やハッカの豆知識などを投稿しています。気になるかたはInstagramもぜひチェックしてみてください。
2.子ども向け料理教室「シェフ☆きっず」の運営(個人活動)
宮崎さんは子ども向け料理教室「シェフ☆きっず」の講師としても活動しています。

地域おこし協力隊の任期は最長3年間。任期終了後も続けられる活動を探すなかで、香川を拠点に全国展開しているシェフ☆きっずと出会いました。
前職時代から子どもと関わることが好きだったこと。栄養士としての資格も活かせること。そして、倉敷薄荷の魅力を地元の子ども達に伝えたいという想いもあり、認定講師となって2024年に倉敷瀬戸内教室を開講しました。
シェフ☆きっずのコンセプトは、「料理はツール、子ども達の生きる力を育む場所」。料理の技術をただ教えるのではなく、子ども達の主体性や感性を育む料理教室を開催しています。
3.「栄養士ミヤの夜カフェ」の開催(個人活動)
2024年1月から1年間、定期的に「栄養士ミヤの夜カフェ」を開催していました。

美観地区からほど近い場所にあるカフェ「ことりふらっと」を間借りし、倉敷薄荷の香りがただよう空間で、身体に優しいおやつとドリンクを提供していた宮崎さん。地域の人や岡山県内の地域おこし協力隊との交流の場を作ることができたと話します。
「栄養士ミヤの夜カフェ」は現在は終了しています。
協力隊としての活動だけでなく、個人でも地域とのつながり作りに取り組んでいる宮崎さん。どのような想いで活動をしているのか話を聞きました。