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パティスリー ラ・ビッシュ(patisserie La Biche) ~ 大変なときこそ、何ができるか考える。被災地にお菓子で支援を続けたケーキ店

パティスリー ラ・ビッシュ(patisserie La Biche) ~ 大変なときこそ、何ができるか考える。被災地にお菓子で支援を続けたケーキ店

買っとこ / 2020.06.30

パティスリーラ・ビッシュ店主、西尾省吾(にしお しょうご)さんインタビュー

ラビッシュ 西尾省吾さん

まずは、平成30年7月豪雨災害当時のことからお伺いいたします。
7月7日まで雨が降り続き、その翌日7月8日には、すでに300個のお菓子とともに避難所に駆けつけているようすがお店のFacebookに書かれていました。
なぜこんなに早く行動がとれたのですか。

西尾
雨が降り始めてから、自宅まわりも冠水したのでお店に出られない状況でした。

7日の夕方くらいからやっと水が引いたので、取りあえずお店も気になったし出てみたら、玉島はすぐに元通り、いつもの風景が広がっていたんですね。

その一方で、すぐ近くの真備町は大変な事態になっていた。
テレビを見て、あまりにも玉島周辺の状況との違いに、驚いたというかショックでした。

真備町があんなことになっているのに、自分は普通にお店に出て、普通の日常がおくれることに心がモヤモヤとざわついたんです。

そんなとき、セントイン倉敷さんがホテルのお風呂を被災者のかたに解放している、というニュースが耳に入ってきました。

もともとセントインさんとは知り合いだったので、すぐに行動されたということに心を動かされました。

ラビッシュ 店内

すでに行動されている人がいる、ということがきっかけになったのでしょうか。

西尾
そうですね、知人が行動している、というところが大きかったと思います。

セントインさんはお風呂、じゃあ「自分に何ができるか、できることはなにか」と考えたとき、店にはお菓子があるじゃないかと思ったんです。

取りあえず玉島エリアの避難所だけでも届けたいと思い、すぐに行動に移しました。

写真提供 パティスリーラ・ビッシュ

画像提供 パティスリーラ・ビッシュ

うちの店一軒だけだと数も足りないので、玉島エリアのお菓子屋さんに声をかけて、1回目は600個、2回目以降はFacebookで募集してその都度避難所に持っていきました。

Facebookを確認してみますと、1回目600個に始まり、全部で5回、半年間で3,950個ものお菓子を配ったことになります。
これほどの数を集めるのは大変だったのではないでしょうか。

西尾
本当にありがたいことです。

玉島のお菓子屋さん以外にも、浅口(あさくち)、井原(いばら)、総社(そうじゃ)、倉敷の水島、児島、あとは山形県のパン屋さんからもご協力いただき、避難所に配ることができました。

画像提供 パティスリーラ・ビッシュ

画像提供 パティスリーラ・ビッシュ

一応真備町のウォールウォーレンさんが再開するまで、と決めていたので、その後は別の形で支援を続けようと思いました。

お菓子の寄付は、大変な思いをされた被災者のかたに大変喜ばれたのではないかと想像するのですが、いかがでしたか。

西尾
まず、「避難所」という場もみんなが初めてのことでした。
僕らもどこまで立ち入ったらいいのか分からなかったので、取りあえず受け付けに置いていくだけだったんです。

2、3日後に、避難所にいた知り合いから「みんなすごく喜んでいたよ」と話が聞けました。

避難所生活というものは、想像以上に厳しくて、周りの目も気になるんですね。

お金がないわけじゃないけど、こんな状況でお菓子なんか買いに行って、贅沢(ぜいたく)なんじゃないかとか、買うことへの罪悪感があったようです。

なので、被災したかたから「こういうお菓子が食べたかったんよ」という声が聞けたときは、本当に嬉しかったです。

ラビッシュ 店内

避難所にお菓子の寄付を続ける一方、「被災した子供たちのためのお菓子教室」も開催されました。
このお菓子教室は、どういった経緯で行われたのですか。

西尾
7月に豪雨があって、子供たちの夏休みが水害の思い出だけで終わってしまう、と大人が心配し始めたんです。

子供たちのケアを、何か思い出に残る楽しいことができないか」と考え、すぐに行動しました。

幸いなことに、SNSで「お菓子教室を計画しています」と投稿したら、すぐに「助けるよ」「手伝います」と言ってくれる人たちがいました。

といっても初めてのことですから、何から何まで手探り状態で、とりあえず会場だけ抑えて、あとは子供つながりのLINEグループで情報をシェアしたり、避難所に口コミで広がって、当日は親子30人以上の参加がありました。

画像提供 パティスリーラ・ビッシュ

画像提供 パティスリーラ・ビッシュ

Facebookを拝見すると、参加されたお子さんの楽しそうなようすが伝わってきます。

西尾
そうですね、僕はとても緊張しましたが(笑)。

10年、20年後の子供たちに、怖い悲しい思い出だけでなく「あのときケーキ作ったよなぁ」って楽しい思い出も残ってもらえればと思います。

水害や災害、非日常なときでも、お菓子を求めてくれる人がいる、そういう思いもあってお菓子教室を開きました。

ここから、未来につながればいいな、と願っています。

パティシエは、離職率の高さが問題になっています。

この業界が廃れないように、お菓子教室に来てくれた子供のなかから1人でも、お菓子の仕事に就きたい、と思ってくれたらとても嬉しいです。

避難所への支援が一段落されたあとは、真備町でどんな活動をされていたのですか。

西尾
避難所へお菓子を配る支援は、ウォールウォーレンさんが復活するまでと決めていたので、12月にお店を再建されてからは、真備町の「お菓子な茶話会」を主催しています。

真備町 お菓子な茶話会

画像提供 パティスリーラ・ビッシュ

ラ・ビッシュのリニューアルもあり、お茶会は2019年7月を最後に一旦休止中です。

2020年の春頃からまた再開しようと思っていたのですが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、まだお茶会の開催ができていません。

ラビッシュ 店内

水害を経て、やや落ち着いたころにまた新型コロナウイルス感染症と、大変なことが続いてしまいましたね。
お店や地域へ大変な影響があったのではないですか。

西尾
ありがたいことに、お店の売り上げ自体はほぼ影響がなかったんです。
ただ、地域の飲食店のつながりもあり、深刻なことだと肌で感じています。いつも元気だった人たちが

「どうにもならない、もうダメだ、おしまいだ」

と言っている飲食店がほとんどなので、自分のお店が忙しくしていることに罪悪感のようなものを感じてしまいました。

そんななかでも、玉島の飲食店の人たちがケーキを買いに来てくれて、自分たちが大変なのに

ここは影響がなさそうで良かったね、安心したよ

と言ってくれるんです。

始めはどう反応していいか戸惑いましたが、その言葉に救われもして、何かの形で応援、貢献したいと思いました。

地域の飲食店への応援、貢献とは、具体的にどのようなことでしょうか。

西尾
いち早くテイクアウトへ動いている人がいたので、自分もテイクアウト用の容器を買って、それぞれのお店に押しつけじゃないけど「テイクアウト、するじゃろ?」って置いていきましたね。

持ち帰りにしたら絶対買いに来るから、お客さんも来るから!と、ハッパをかけるつもりで、とにかく動いています。

平成30年7月豪雨災害から新型コロナウイルス感染症と、大変なことが続きますが、自分に何ができるのか、試されるじゃないけど、チャンスを与えられてると思って、ただ思いつくままに動いてますね。

いまの自分、ラ・ビッシュがあるのは、周りの人たちに恵まれているから。
これからも、少しでも恩返しがしたいです。

おわりに

ラビッシュ ケーキ

イライラしたとき、疲れたとき、気分がのらないとき。甘いお菓子に何度助けられたことでしょう。

甘くてバターの香りがたっぷりのお菓子を食べて、ホッと心が和むことってありますよね。

だからこそ、被災したかたの「こういうお菓子が食べたかったんよ」という言葉に、どれほどの思いが込められているのだろうと、お話を聞いて胸がつまりました。

「1日1日を一生懸命に、一生職人でありたい」と話してくれた西尾さん。

先が見えない現代だからこそ、実直に、自分にできることを頑張ろうと感じました。

ぜひ、新倉敷駅前すぐの「パティスリーラ・ビッシュ」に訪れてみてくださいね。

パティスリーラ・ビッシュのデータ

パティスリーラビッシュ 外観
名前パティスリーラ・ビッシュ
住所岡山県倉敷市新倉敷駅前1-23-111
電話番号086-526-8801
駐車場あり
新倉敷駅前再開発ビル共同駐車場8台
営業時間午前10時~午後7時30分
定休日
支払い方法
  • 現金
予約の可否
座席10席 テーブル数:4×1 2×3
タバコ
トイレ
子育て
バリアフリー
ホームページラ・ビッシュ:Facebook
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あまむらみちえ

あまむらみちえ

甘味、辛味、お肉が大好きな食いしん坊ライター。チーズケーキと担々麺に目がありません。2児の母でもありますが、子どもと争って食べている大人げないアラフォーです。
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ラビッシュ ケーキ

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