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倉敷市立自然史博物館 ~ 1983年の開館から40年。昆虫・植物などの資料を100万点以上収蔵する博物館

倉敷市立自然史博物館 ~ 1983年の開館から40年。昆虫・植物などの資料を100万点以上収蔵する博物館

観とこ / 2023.06.28

倉敷市立自然史博物館は、中央図書館や美術館などがある中心市街地にあり、昆虫や植物・動物・地学などの分野に関する展示資料は、常に11,000点を超えています。

1983年に開館2023年には40周年を迎え、収蔵資料は104万点を超えました。

行政主導ではなく、自然を愛する市民から始まった倉敷市立自然史博物館。

常設展示室に加えて、普段入ることのできない収蔵庫収蔵資料なども紹介します。

記載されている内容は、2023年6月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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倉敷市立自然史博物館のデータ

倉敷市自然史博物館
名前倉敷市立自然史博物館
所在地岡山県倉敷市中央2-6-1
電話番号086-425-6037
駐車場なし
専用駐車場はないため、周辺の有料駐車場を利用
・倉敷市営中央駐車場
・倉敷市営美観地区南駐車場
・倉敷市営あちてらす倉敷駐車場
開館時間午前9時~午後5時15分(最終入館は午後4時45分)
休館日
ただし祝日または振替休日の場合は、その翌日。年末年始(12月28日~1月1日)、その他、収蔵庫くん蒸などのため、臨時休館あり
入館料(税込)一般:個人150円、団体(20人以上)100円
大学生:個人50円、団体(20人以上)30円
高校生以下: 無料
65歳以上:無料
障がい者とその付添人1名:無料
※特別展開催時の入館料は別に定める場合があり
※その他各種減免があり。要問合せ
支払い方法
  • 現金
予約について
学校園や団体でのご観覧は、あらかじめの電話(086-425ー6037)で予約可能。
電子申請(ネット申込み)とメールでの予約は現在受け付けていません。
電話の際、以下のことを知らせてください。
・学校園名または団体名
・見学者数と引率者数
・見学日
・見学開始時刻と終了時刻
・引率担当者名
・連絡先電話番号
タバコ
トイレ

子育て

バリアフリー

ホームページ倉敷市立自然史博物館

倉敷市立自然史博物館とは

筆者は倉敷市立自然史博物館と聞くと、まず1階エントランスホールで迎えてくれるナウマンゾウの親子を思い浮かべます。

▼左が自然史博物館のアイドル「パオちゃん」、右がパオちゃんのお母さん「ナウママ」です。

左:パオちゃん、右:ナウママ
左:パオちゃん、右:ナウママ

名前を知ると、より愛着が湧きませんか?

鼻を動かして鳴くリアルな存在感に圧倒されます。

▼倉敷市立自然史博物館の簡単な位置はこちら。

大原美術館などがある美観地区の西側です。

倉敷市立美術館や倉敷市立中央図書館に隣接する北側にあります。

倉敷市のなかでも、市街地の中心の文化的な施設が集まる一角に位置しているのですね。

▼こちらの入口を入って左側が倉敷市立自然史博物館で、倉敷市の観光休憩所と同じ建物内にあります。

倉敷市立自然史博物館 入口

入るとすぐに、先ほど紹介したパオちゃんとナウママがお出迎えしてくれます。

入口左手にある幾何学模様の装飾。「昆虫・植物・動物」を模した「トンボ・植物の葉・カタツムリ」でしょうか。
入口左手にある幾何学模様の装飾。「昆虫・植物・動物」を模した「トンボ・植物の葉・カタツムリ」でしょうか。

展示物を紹介

倉敷市立自然史博物館では、おもに常設展示期間限定特別展示を見られます。

1階のエントランスホールから、2階、3階へと見学する順番で紹介しましょう。

エントランスホール

エントランスホールには紹介したナウマンゾウの親子の他にも、「ホッキョクグマの剥製(はくせい)」と「トリケラトプスの頭蓋骨模型」も出迎えてくれます。

ホッキョクグマの剥製は以前、とあるボウリング場で展示されていたものだそうですが、その後の所有者から倉敷市立自然史博物館に寄贈されています。

今にも動き出しそうな迫力があり、保存状態の良い立派なホッキョクグマです。

倉敷市立自然史博物館 動物 剥製 ホッキョクグマ

トリケラトプスの頭蓋骨模型」は、小学生以下の子どもが乗れます。

筆者の娘も喜んでまたがっていたのを思い出しました。

実は、倉敷市立自然史博物館の学芸員による手作り

発泡ウレタンや石こうで製作したそうですが、その発想力と実行力に驚きです。

倉敷市立自然史博物館 エントランスホール トリケラトプス 頭蓋骨模型

2階 岡山県のなりたち(第1展示室)

第1展示室では、倉敷市児島下津井の郷土史家でもあった山本慶一(やまもと けいいち)さんによる化石のコレクションを紹介しています。

山本さんは、1950年頃から下津井の漁師網にかかった化石を収集。

のちに、1,000点を超えるコレクションを倉敷市立自然史博物館に寄贈しています。

倉敷市立自然史博物館 化石

山本さんがこれらの化石収集を始める前までは、化石が網にかかると破れるため漁師にとっては迷惑でしかなく、「そのまま海に返していた」と聞いたことがあります。

海底から引き揚げられたという、ナウマンゾウの化石の数や大きさに驚きです。

倉敷市立自然史博物館 化石

▼こちらは、生命の歴史を地球規模で学べる化石の展示室。

倉敷市立自然史博物館 化石 林原自然科学博物館

保存状態が良い、美しい輝きのある化石を間近に触って見てください。

虫眼鏡も準備されていますよ。

2階 岡山県のいきもの(第2展示室)

第2展示室では、さまざまな鳥、ヌートリアなどの動物の剥製が充実。

ヌートリアや展示されているイノシシ・ニホンジカなどは、駆除や事故などにより取得し動物標本として製作・展示しています。

倉敷市立自然史博物館 動物 剥製

動物の剥製のなかでも、ひときわ存在感のあるツキノワグマも展示

普段、野生ではなかなか見られない岡山県のいきものを間近に観察できます。

つぶらな瞳に癒されませんか。

倉敷市立自然史博物館 動物 剥製

2階 昆虫の世界(第3展示室)

第3展示室は昆虫の展示室

▼以下は、「同種内の個体変異が見てわかる標本」です。

倉敷市立自然史博物館 昆虫 クワガタ

採取する際に大事な記録である場所による地域差異をわかりやすく展示。

同じ種類の個体でも、北海道から九州まで、地域による細かな変異を見て確認できます。

倉敷市立自然史博物館 昆虫 地域変位

「南部(琉球列島)の昆虫の展示」では、昆虫分野の学芸員が大学3年生のときに採取した「イシガキアオジョウカイ」も展示。

倉敷市立自然史博物館 イシガキアオジョウカイ

それまで、沖縄本島での同類の採取事例はあったそうですが、石垣島でこの仲間が採取されたのは初めて。

新種として認定され、学名として「テムス・イシガキエンシス」と命名されました。

説明がなければ、新種である希少な昆虫と気づくことも難しいですね。

ぜひ、こちらの「イシガキアオジョウカイ」も間近でみてくださいね。

倉敷市立自然史博物館 イシガキアオジョウカイ

「研究への活用」の展示では、「イシガキアオジョウカイ」のような新種の昆虫に関する研究成果などが紹介されています。

倉敷市立自然史博物館 昆虫 研究成果

食べ物の多様性」の展示も必見。

学芸員の手作りによる「さまざまな生活場所で生息する昆虫の食べ物」です。

▼この写真では、動物の糞を食べる昆虫を紹介。

動物の糞(学芸員によりフリーズドライ加工)を食べる昆虫の紹介
動物の糞(学芸員によりフリーズドライ加工)を食べる昆虫の紹介

この糞は学芸員によりフリーズドライ製作したものです。

まるで本物のように見えるこちらの展示物、すべてのボタンを押して楽しんでみてくださいね。

チョウを見つめる温かい眼差しが必見です。

また、花の蜜をすうチョウの標本が、まるで生きているかのように見事に再現されています。

倉敷市立自然史博物館 昆虫 手作りの展示スペース

3階 植物の世界(第4展示室)

第4展示室に入り、まず目に入るのが、昭和時代の部屋を再現した展示コーナー。

くらしのなかの植物」がテーマで、昭和時代には多くの木や竹などの植物を材料とした、生活必需品に囲まれて生活していたことに気づかせてくれます。

倉敷市立自然史博物館 植物

▼以下は、植物がまるで生きているかのような形での展示です。

倉敷市立自然史博物館 植物

押し花のような標本と違い、花や葉の色はもちろんのこと、それぞれの植物の全体的な外観がよくわかります。

こちらのコーナーでは、タイムリーな話題を紹介しています。取材時は、2023年現在のNHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルでもある、牧野富太郎(まきの とみたろう)氏にかかわる特別企画「牧野富太郎と岡山の植物」を展示。

倉敷市立自然史博物館 牧野博士

最近になって、岡山県里庄出身の博物学者 佐藤清明さとう きよあき)氏が収集した植物標本コレクションのなかから、発見されたそうです。

標本ラベルもおそらく牧野博士の自筆とのことで、まさしくお宝の展示です。

それぞれの竹や笹の特徴が見てわかるよう、種類によっては葉の裏表の特徴や茎の部分までわかるように台紙に貼りつけています。

それぞれの標本には、学名や和名・採取場所・採取日が記載理されていますね。

倉敷市立自然史博物館 牧野博士

3階 新着資料展(特別展示室)

収蔵標本の収集方法として、一番多いのが寄贈とのこと。

令和5年3月末時点の収蔵標本のうち、約93%が寄贈によるものと聞くだけでも、倉敷市立自然史博物館が地域のかたと密に関係していることに気が付きます。

例年、数万点の標本が寄贈されているため、寄贈物の一部の中から特別な標本について毎年「新着資料展」として公開されています。

倉敷市立自然史博物館 新着資料展

植物や岩など土地の地権者の所有物とされる自然物とは異なり、昆虫は動くものであるため、法的な所有権がないそうです。

想像したことさえありませんでしたが、説明をうけると納得です。

寄贈が多い昆虫については、今回約5,000点も展示されています。

倉敷市立自然史博物館 新着資料展

寄贈された昆虫標本の数々
寄贈された昆虫標本の数々

また、多くの剥製も寄贈されています。

昭和時代の一般家庭では、床の間や玄関などで、動物の剥製が好まれて飾られていましたが、現代では飾られなくなってきました。

世代交代希少野生動物としての規制が厳しくなった影響などで、多くの剥製が手放されているそうです。

見事な象牙や多くのウミガメの剥製など
見事な象牙や多くのウミガメの剥製など

3階 ニタリクジラの骨格標本(エレベータ前)

3階エレベータ前には、令和3年9月に倉敷の水島港で発見された全長11.67mのクジラが骨格標本として、収蔵展示されています。

水島港に寄港していたタンカーの船首に引っかかっていたクジラです。地元瀬戸内海では見ることのない巨体で、ひきあげるだけでも大変だったそう。

倉敷市立自然史博物館 ニタリクジラ

大きすぎるため、常設展示ができないのが残念ですが、多くのかたがたの協力により、このように貴重な骨格標本が、次世代に受け継がれていくのですね。

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収蔵庫の紹介

普段入ることのできない自然史博物館の心臓部である収蔵庫を案内してもらいました。

▼この狭い通路の左手に、昆虫などの貴重な標本が収蔵されています。

倉敷市立自然史博物館 収蔵庫
倉敷市立自然史博物館の心臓部 収蔵庫

標本を害虫やカビから守るため、収蔵庫の温度・湿度管理や年に一度「くん蒸(くんじょう)」といわれる殺虫処理が必要です。

ここで、昆虫が収蔵されている棚の前に案内されると同時に、「何か見てみたい昆虫はありますか?」との質問が学芸員からありました。

▼筆者が「ノコギリクワガタ」とリクエストすると同時に、収蔵・保管している標本を見せてもらったところ。

ノコギリクワガタの標本
ノコギリクワガタの標本

質問されてから迷い探すことなく10秒もたたないうちに標本が取り出されます。

系統分類順に整理されていることを実感できます。

▼続いて別の標本として、「整然と並べられている10個体」を見せてくれました。

個体変異がわかる標本
個体変異がわかる標本

筆者は左の標本が「ノコギリクワガタ」、右の標本は「コクワガタ」と自信をもって言いましたが大外れ。

実は、すべて「ノコギリクワガタ」とのことです。

「個体変異がわかる10個体の完全な標本がそろうためには、何百もの貴重な標本を集めてサイズの異なる標本をバランス良く選抜しなければなりません」との説明を受け、自然史博物館の重要性をより実感できます。

続いて、岡山県産のベッコウトンボの標本も見せてもらいました。

1938年に岡山市澤田(現 中区沢田)で採取された標本ですが、今では岡山県内のベッコウトンボは絶滅したとのこと。

ベッコウトンボの標本
ベッコウトンボの標本

2匹の貴重な標本が残されていますが、「当時は珍しいという認識はなかったのでは?」と学芸員は言います。

現在、全国の生息地もわずか数か所しかなく、国内でも絶滅していくことが危惧されているほどの、国内希少野生動植物種

すでに入手できない多くの希少生物の標本が収蔵されており、まさしく「お宝」であることを実感します。

ホームページでは、収蔵資料が100万点を突破した記念として、「倉敷市立自然史博物館秘蔵のお宝100選(随時更新中)」の案内がされています。

ぜひ、ホームページでも確認してみてください。

岡山県内では絶滅したベッコウトンボの標本(左の2個体 赤丸部)
岡山県内では絶滅したベッコウトンボの標本(左の2個体 赤丸部)

年間に数万点の寄贈があるため、収蔵庫の収容能力は、すでに超えています」とのこと。

そのため、通常の棚の上に、学芸員による手作りの収蔵棚が設置されています。

一つでも多くの標本を収蔵したいとする気持ちが伝わる工夫です。

学芸員による手作りの収蔵棚
学芸員による手作りの収蔵棚

展示物や収蔵庫を案内してくれた昆虫分野の学芸員である奥島雄一おくしま ゆういち)さんに、倉敷市立自然史博物館についてインタビューをしました。

インタビューを読む

倉敷市立自然史博物館のデータ

倉敷市自然史博物館
名前倉敷市立自然史博物館
所在地岡山県倉敷市中央2-6-1
電話番号086-425-6037
駐車場なし
専用駐車場はないため、周辺の有料駐車場を利用
・倉敷市営中央駐車場
・倉敷市営美観地区南駐車場
・倉敷市営あちてらす倉敷駐車場
開館時間午前9時~午後5時15分(最終入館は午後4時45分)
休館日
ただし祝日または振替休日の場合は、その翌日。年末年始(12月28日~1月1日)、その他、収蔵庫くん蒸などのため、臨時休館あり
入館料(税込)一般:個人150円、団体(20人以上)100円
大学生:個人50円、団体(20人以上)30円
高校生以下: 無料
65歳以上:無料
障がい者とその付添人1名:無料
※特別展開催時の入館料は別に定める場合があり
※その他各種減免があり。要問合せ
支払い方法
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学校園や団体でのご観覧は、あらかじめの電話(086-425ー6037)で予約可能。
電子申請(ネット申込み)とメールでの予約は現在受け付けていません。
電話の際、以下のことを知らせてください。
・学校園名または団体名
・見学者数と引率者数
・見学日
・見学開始時刻と終了時刻
・引率担当者名
・連絡先電話番号
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眞鍋忠義

眞鍋忠義

倉敷市在住で、2人の娘を持つアラフィフ会社員。
大学生となり、愛媛県松山市・大阪府豊中市・東京都府中市・愛知県日進市などで生活した後のUターン組です。
一度、故郷から離れて暮らしたことでも気が付くことができる、ここにしかない魅力をご紹介できるのでは?と思っています。
令和2年度 高梁川志塾(第1期)・令和3年度 高梁川流域ライター塾卒業生です。
これからも学びながら、私自身の体験などを中心に紹介したいと思います。

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倉敷市立自然史博物館 奥島学芸員

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