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店主・岡本聞太さんにインタビュー
ヤマウ・コーヒースタンドの岡本 聞太(おかもと ぶんた)店主に、お話しを聞くことができました。
ヤマウ・コーヒースタンドを開店した経緯
どのような経緯でヤマウ・コーヒースタンドを開店したのですか?
岡本
今、ヤマウ・コーヒースタンドがある場所は「ヤマウ蒲鉾店」という明治時代から続く蒲鉾屋があったんです。
私の父がヤマウ蒲鉾店を三代目として経営していて、その後兄が四代目として跡を継ぎました。
しかし、私がワーキングホリデーでオーストラリアへ行っていたとき、実家からヤマウ蒲鉾店を閉業するという知らせを聞いたんです。
もともと私は、ワーキングホリデーを利用して海外を点々とする予定でしたが、予定を変更して帰国することにしました。
実家の廃業を機にコーヒー店の開業を決意したのですか?
岡本
じつは、実家の廃業の知らせを聞いたときには、まだコーヒー店をしようと考えていませんでした。
ただ「生まれ育った美観地区で何かやりたいな」という漠然とした思いは、ずっと持っていました。
また、お世話になった塾の先生から「海外に行くなら、日本から海外に何かを持っていくか、海外から日本へ持って帰りなさい」と教えてもらって、ワーキングホリデー中に美観地区で何をしたらいいかをずっと模索していたんです。
そんなときに、実家から廃業する話を聞いて、実家の後で何かをやりたいなと思いました。
なぜコーヒー店になったのですか?
岡本
最初はクレープ店を考えたんです。
昔、美観地区に人気のクレープ店あったので。
また、店は1人で運営するつもりだったので、クレープだと1人でもできるし、手軽に食べられるからです。
でも、年齢層が限定されるのでやめました。
そのとき、オーストラリアではカフェが多く、コーヒー文化が根付いていることに気がついたんです。
オーストラリアのカフェではコーヒーのテイクアウトが日常的に行われています。
通勤や外出のときにカフェでコーヒーをテイクアウトし、飲みながら移動するのが当たり前でした。
そこで、観光地である美観地区では、テイクアウトをメインとしたコーヒー店が合うのではないかとピンときたんです。
コーヒーは、幅広い年齢層に対応できるのも魅力だと思います。
また、当時は美観地区界隈にエスプレッソ系のコーヒーを出す店もありませんでした。
ですから、エスプレッソ系のコーヒーを扱うテイクアウトコーヒー店を開店しようと決めたんです。
コーヒーについて、どこで修行したのですか?
岡本
コーヒースタンドの開業を決意したのは帰国の直前でした。
そのため、あまり時間はありませんでしたが、オーストラリアには1週間程度でバリスタの基礎を学べるスクールがあったんです。
そこに通って、基礎を学びました。
そして、帰国後に知人の働いているカフェにお願いして、ラテ作りなどの練習をさせてもらいました。
あとは、開店して実践しながら学んでいったんです。
お店のこだわりについて
ヤマウ・コーヒースタンドはラテがおいしいお店と聞きました。なぜラテをメインにしたのですか?
岡本
一番大きな理由は、私自身ラテが好きだからです。
じつは、私は普段ラテしか飲まないんですよ。
それに、エスプレッソやアメリカーノは好き嫌いが分かれるんです。
でも、エスプレッソにミルクが入ることで飲みやすくなります。
だから、エスプレッソやアメリカーノも扱っていますが、メインメニューにするつもりはありません。
あと、美観地区界隈にはいろんなコーヒーを扱う店があって、それぞれ特徴がちがいます。
ヤマウ・コーヒースタンドは「おいしいラテが飲める店」とうのが特徴。
私は、エスプレッソが飲みたい人にはエスプレッソがおいしい店を紹介しますし、昔ながらの喫茶店が好きな人には老舗の喫茶店を紹介します。
ラテが飲みたければ、ヤマウをおすすめします。
そのようにいろんな特徴を持ったコーヒー店があれば、お客さんの選択肢も増えて美観地区が盛り上がるんじゃないでしょうか。
1店舗ですべてをまかなう必要はないと考えています。
抹茶ラテも人気とのことですが、抹茶ラテをメニューに加えたのはなぜですか?
岡本
あくまでラテをメインとしたコーヒー店なのですが、複数人で来店したときに、コーヒーが苦手なかたがいたときのことを考えて、コーヒー以外のメニューもそろえました。
抹茶ラテはその中のひとつです。
ほかに紅茶ラテやメロンクリームソーダなどもあります。
そのうち、高校生を中心に若い世代のお客さんが抹茶ラテをよく注文するようになって、抹茶ラテが人気商品のひとつになったんです。
もともと高校生はターゲットではありませんでした。
ですから、抹茶ラテが人気になったのは想定外でしたね。
商品以外の部分でのこだわりはありますか?
岡本
まず、「ヤマウ」という屋号と紋です。
ヤマウ蒲鉾店は廃業しましたが、業態を変えて私がヤマウの屋号と紋を受け継ぎました。
屋号で考えれば、曾祖父・祖父・父・兄と受け継がれ、私で五代目ということになります。
屋号だけでなく紋も受け継いだのは、蒲鉾店時代からヤマウを知っている人に分かりやすく、蒲鉾店時代を知らない人には、紋が珍しいので目印になるからです。
テイクアウトした人が持っているカップの紋を通りすがりの人が見て、「ヤマウだ」と一目でわかりますし、印象にも残りやすいと思います。
また、建物もほぼ蒲鉾店時代のまま使っているのもこだわりですね。
ここは生まれ育った家でもあるので、愛着があります。
それに古い昔ながらの雰囲気が好きなのも理由です。
老舗ならでは年季の入った建物を生かしたかったんですよ。
外観は、ほぼそのまま。
「蒲鉾」の看板も残しました。
紋と同じ理由で、目印になるからです。
内装は、壁を張り替えたのと、カウンターを設置したことが大きな変更点。
それ以外の内装もほぼそのままです。
床は張ってあったシートをはがしただけなんですよ。
天井もそのままの雰囲気を残しています。
大変なのはエスプレッソが外気の影響を受けやすいこと
店舗を運営していて大変なことはありますか?
岡本
エスプレッソを作るとき、品質の調整が大変ですね。
エスプレッソは、湿気などの外気の影響を受けやすいんです。
しかも、うちは入口を開けたままなので余計に外気の影響を受けます。
急に天候が変わったときなどは特に大変です。
何度も作り直して、飲んで確認するという作業を繰り返すときは苦労します。
また、ゴールデンウィークのように春や夏の連休時には、冷たいメニューがよく売れます。
氷がたくさん必要になるので、製氷作業が大変ですね。
美観地区への思いについて
岡本さんは美観地区で生まれ育ったそうですが、昔と今で、美観地区は変わりましたか?
岡本
ヤマウ蒲鉾店の2階が自宅でしたので、美観地区で育ちました。
今も店の2階に住んでいます。
昔に比べると、美観地区を訪れるお客さんの層が変わったと実感していますね。
私が小さなときは、美観地区に来ていたのは中年の方やご年配の方が中心でした。
今では、若い人もたくさん来るようになりました。
海外の方も多いですね。
客層がとても広くなったと思います。
客層が広がったことで、お店の数も種類も増えましたね。
デニムのお店や、いろんな種類の飲食店もできました。
それに合わせて、人の流れも変わったと感じています。
さいごに、お店や美観地区に対する想いをお聞かせください。
岡本
ヤマウ蒲鉾店で育ち、大きくなってから住まいは別の場所になりましたが、美観地区には思い入れがありますね。
今もヤマウ・コーヒースタンドのまわりには、昔からよく知っている人がたくさんいますよ。
お世話になった町だから、好きなラテでヤマウ・コーヒースタンドを盛り上げて、恩返しをしたいですね。
おわりに
ヤマウ・コーヒースタンドを取材し、美観地区にある老舗の店で生まれ、美観地区で育った岡本店主だからこその美観地区を盛り上げたいという思いを感じました。
老舗として受け継がれてきたものを継承してそれを生かしながら、オーストラリア生活で知ったテイクアウトコーヒーという新たな文化を広めているのがヤマウ・コーヒースタンドの魅力だと思います。
倉敷美観地区に訪れた際には、ヤマウ・コーヒースタンドのラテなどをテイクアウトして、ヤマウ・コーヒースタンドの味を楽しみながら美観地区を散策してみてはいかがでしょうか。
- モデル:りる
- 撮影:大嵩竜一
ヤマウ・コーヒースタンド(YAMAU coffee stand)のデータ
名前 | ヤマウ・コーヒースタンド(YAMAU coffee stand) |
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住所 | 岡山県倉敷市本町5-4 |
電話番号 | なし |
駐車場 | なし |
営業時間 | 3月〜11月:午前10時〜午後6時 12月〜2月:午前10時〜午後5時 ※美観地区で夜間イベントがあるときは、夜間営業することもある |
定休日 | 不定休 |
支払い方法 |
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予約の可否 | 不可 |
座席 | テイクアウト店のため席はなし。ベンチが3脚。 |
タバコ | 完全禁煙 |
トイレ | |
子育て | |
バリアフリー | |
ホームページ | YAMAU coffee stand 公式インスタグラム |