倉敷市は、広島と大阪の間に位置し、交通アクセスが便利な街です。新幹線を利用すれば大阪から約1時間で到着する岡山県内第2の都市であり、歴史と文化が息づく地域です。
筆者は、中国人の視点から児島の魅力を紹介したいと思い、「第26回 倉敷雛めぐり in 児島」に訪れました。
その中で今回は、児島市民交流センターで開催中の「第10回産業お雛さま展」に足を運び、初春の児島の風情や、歴史と現代が融合した町の魅力を感じながら、家族とともに楽しいひとときを過ごしました。

記載されている内容は、2025年3月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
児島ってどんなところ?

倉敷市の南端にある児島は、瀬戸内海の美しい自然に囲まれた港町で、四季折々のイベントを通じて多くの人々が訪れます。
春のワクワクする気持ちとともに、私たち家族は児島へ出かけました。
家から車で30分の距離で、児島地域に入ると、道路の両側には「児島雛めぐり」の旗がたくさん飾られており、まるでかわいいお雛さまたちが玄関まで迎えてくれているようでした。
児島は、江戸時代には塩田や綿織物産業が盛んで、商人の町として発展しました。明治時代には日本初の国産学生服の生産地となり、戦後はジーンズ産業の先駆けとして注目を集めました。現在も「国産デニムの発祥地」として知られ、多くの観光客が訪れます。また、児島雛めぐりなどの伝統文化を大切にする町でもあり、歴史と革新が共存する魅力的な地域です。
そんな児島雛めぐりをより深く楽しむために、お雛さまの歴史をたどってみると、思いがけないつながりが見えてきます。
お雛さまと児島のつながり
日本のお雛さまは独自の文化として発展しましたが、その歴史をたどると、中国の風習と深い関係があります。
昔の中国では、悪いことが起こらないように、紙や布で作った人形(ひとがた)を川に流す風習がありました。この「流し雛」という風習が平安時代(794年~1185年)に日本に伝わり、貴族の子どもたちの遊び「雛遊び」と結びついたのです。
その後、室町時代(1336年~1573年)には、今の「雛祭り」の形になり、江戸時代(1603年~1868年)には、きれいな雛人形をかざる習慣が庶民の間にも広がりました。お雛さまの服や飾りには、中国の昔の宮殿の文化の影響が見られます。
では、今回私たちが訪れる児島では、なぜお雛さまの文化がこれほど大切にされているのでしょうか。
児島で「お雛さまめぐり」がおこなわれる理由

雛祭りは、3月3日の「桃の節句」におこなわれる伝統行事で、女の子の健やかな成長と幸せを願うものです。児島で「お雛さまめぐり」が開かれるのは、この町が昔から商業で栄え、伝統を大切にしてきたからです。
江戸時代、児島は繊維産業や商業の町として発展し、雛祭りも暮らしのなかに根付いてきました。
今では、雛人形が町を彩り、歩くだけで華やかな気分に。観光としても楽しめるイベントになりました。そんな「お雛さまめぐり」も今年(2025年)で26回目。これからも児島の大切な春の風景として、多くの人に親しまれていきます。
青空の下、初春のやわらかな風を感じながら、私たちは「第10回産業お雛さま展」の会場である児島交流センターへ足を踏み入れました。

第10回 産業お雛さま展の見どころ
館内に入ると、高い天井いっぱいに描かれた美しい天井画が広がり、壮麗な空間に思わず息をのみます。特別な雰囲気のなかで、今回の「お雛さまめぐり」の展示会が開催されていました。

児島の繊維企業23社と学校4校が参加する「お雛さまめぐり展」では、伝統と現代の感性が融合したユニークな作品が展示されています。
おもな展示作品
会場には、手がけた個性豊かなお雛さまがずらりと並び、ひとつひとつが異なる魅力を放っています。彩り鮮やかな衣装をまとったお雛さまたちが並ぶ光景に、思わず足を止め、じっくりと見入ってしまいました。
素晴らしい作品が数多く並ぶなかから、今回は筆者が特に印象に残ったものをいくつか紹介しますね。
株式会社ドミンゴ
株式会社ドミンゴは、児島でデニムを作っている会社です。この展示では、日本の伝統文化とデニムの町ならではの魅力が一緒に楽しめます。

デニムの町・児島ならではの布を使用し、和柄と組み合わせたお雛さま。まるで桜の花びらと共に舞うような優雅なデザインです。
清原株式会社
この作品には特別な工夫があります。
ボタンや糸などのアパレルパーツを活用し、動物モチーフのお雛さまを制作。犬や猫、ワニなどが雛人形になり、遊び心あふれるデザインになっています。

このお雛さまから、ジーンズや服づくりの町・児島ならではの魅力を感じませんか? ユニークな発想で、思わず笑顔になってしまう可愛らしさが魅力ですね。
株式会社桑和
作業服の生地を使った特別な雛人形。クマやウサギが伝統衣装を着ており、児島の職人技が光る作品です。

このお雛さまは、普通の雛人形とはちょっと違います!かわいいクマやウサギが、日本の伝統的な衣装を着ています。そして、後ろの人形もとてもかっこいいですね。
株式会社ビッグジョン
日本初の国産ジーンズメーカーとして知られるビッグジョンの作品。デニムを用いた雛人形は、伝統と現代のファッションが融合した魅力的な展示です。

こちらは、西洋の人形が着ている衣装に、昔の日本文化と現代のデニムファッションが融合された作品です。児島のジーンズの歴史を、さらに楽しめる一つの作品となっています。
株式会社晃立
ワインボトルをお雛さまに見立てたユニークな作品。伝統的な着物やデニムの衣装をまとったボトルが並びます。

日本の伝統的な着物を着たお雛さまや、デニムの洋服を着たキャラクターが並んでいます。これは「ビン(瓶)のお雛さま」と呼ばれています。
倉敷帆布株式会社
倉敷帆布では特殊な製法を用い、耐久性と通気性に優れた商品を生み出しており、多くの消費者に愛用されています。
こちらは日本の伝統的な雛人形に、児島特産の帆布を取り入れた作品。素材の温かみが感じられる一品です。



今回のお雛さまの衣装も、その高品質な技術を感じさせる仕上がりで、色彩から生地まで細部にこだわりが感じられました。
さて、児島市民交流センターの1階で展示品をじっくり楽しんだ私たちは、いよいよ階段を上り、2階の幼稚園の子どもたちが作ったお雛さまの展示室へと向かいました。
幼稚園児の作品展示(第12回 児島っ子ようちえん作品展)
2階の展示室では「第12回 児島っ子ようちえん作品展」が開催されていました。白い柱が並ぶヨーロッパ風の空間の天井には、鮮やかでダイナミックな天井画が特徴的です。

アーチ状の構造にそって、日本の伝統的な絵や人物が描かれており、まるで大きな絵巻物のような迫力があります。
この天井画は、児島の歴史や文化を表しているともいわれ、訪れた人に強い印象を残します。また、西洋風の建物のデザインと組み合わさることで、特別な雰囲気が生まれ、空間全体が芸術的な魅力に包まれているのも特徴です。
さらに、白い壁には美しい装飾やモザイク模様が取り入れられ、西洋の歴史的建築の雰囲気を感じながら、子どもたちの創造力あふれる作品を鑑賞できます。



おわりに
児島雛めぐりでは、15か所の展示場所があり、町全体で華やかなお雛さまを楽しめます。今回はジーンズストリートエリアにある「児島市民交流センター」を訪れ、日本の伝統文化を体験しました。お雛さまの美しさだけでなく、職人の技術や繊維産業の歴史にも触れることができ、とても充実した時間を過ごしました。
次回は、国登録有形文化財である「旧野﨑家住宅 別邸 迨暇堂」の大広間で展示されるさまざまなお雛さまを見に行くのが楽しみです。
第10回産業お雛さま展のデータ

名前 | 第10回産業お雛さま展 |
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期日 | 2025年2月15日(土) ~ 3月9日 (日) 午前9時 ~ 午後4時30分 |
場所 | 児島市民交流センター |
参加費用(税込) | 入館料:無料 |
ホームページ | 児島市民交流センター |