倉敷市の南部に位置する水島といえば、なにを思い浮かべるでしょうか。
工業地帯といったイメージが強いかもしれません。
実は水島は、住宅地や商業施設が数多く立ち並び、約9万の人々が住む活気ある地域です。
一方で古くからある商店街は、時の流れともにシャッターを下ろした店舗が増えているのが現状です。
そんな水島を元気にしようと2008年に立ち上がった大人たちがいます。
水島で活動を続けているミズシマ盛り上げ隊です。
企画、運営を自分たちで考え手作りでおこなうイベントは、いつも大成功をおさめ地域の人々から厚い信頼を得ています。
すべてのイベントにおいてコンセプトを決め、それに向かって隊員みんなで突き進んでいるのです。
一体どのようなコンセプトで、どのようなイベントなのでしょうか。
ミズシマ盛り上げ隊がおこなったイベントをひとつずつ紹介していきます。
記載されている内容は、2024年3月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
ミズシマ盛り上げ隊とは?
ミズシマ盛り上げ隊は、倉敷市水島の街を盛り上げるために有志で集まったボランティアグループです。
2008年に結成し、数々のイベントを自分たちで企画、運営をしてきました。
一番のモットーは、自分たちが楽しむこと。
自分たちが楽しくなければ、周りの人々を楽しませることはできないと、いつでも本気で楽しんでいます。
現在20名ほどの隊員たちは、子どもたちに憧れられる存在を目指して日々奮闘しています。
ミズシマ盛り上げ隊がこれまで手掛けたイベント
ミズシマ盛り上げ隊が結成されてからこれまでに、さまざまなイベントをメンバーや地域の団体と協力しながらおこなってきました。
1年に4つのイベントを掛け持ちしながら運営していた年もあります。
- 講演会(2008年~)
- ミズシマ音楽祭(2015年)
- 水島水鉄砲まつり(2013年~2018年)
- みずこんPARTY(2014~2023年)
- いす1グランプリ水島(2015年~2019年)
- ミズシマ夕暮れガーデン(2016年~2019年、2022年)
- アブレイズガーデン水島(2023年)
- 奇跡のクリスマスBBQ(2023年)
それでは、どのようなイベントをミズシマ盛り上げ隊がおこなってきたのかを紹介します。
講演会
ミズシマ盛り上げ隊が結成するきっかけとなった最初のイベントです。
当初は3人だった初期の隊員が、「日本を元気にしようぜ」と意気投合し、どうすれば日本が元気になるか考えたそうです。
そして2008年「てんつくマン」という全国を飛び回っている講師を倉敷に呼び寄せ、講演会を計画。
自分たちでチケットを売り、司会から会場セッティング、受付まですべて手作りでおこないました。
最終的に300人収容の会場に400人以上のお客さんが集まり、立ち見もでるくらいの大盛況の講演会になりました。
地域の人々を元気にする講演会を2~3年続け、地元の水島愛あいサロンでも開催したそうです。
また講演会で得た利益は、寄附金のほか、パソコンや図鑑などの物品を購入して児童養護施設に送りました。
水島水鉄砲まつり
2013年水島港まつりの一環として、水島商店街の活性化のために考え出されたイベントです。
インドア世代の子どもたちに、はちきれるような経験をさせたい、自分の枠を超えて本気で遊んでもらいたいというコンセプトで、大人と子どもが本気で対決する水鉄砲まつりを計画し、開催しました。
このイベントには壮大なストーリーがあります。
1年に一度水島に出現する島「みずしまアイランド」。
その島には竜神様が住んでおり、島を守る四天王を倒さないと竜神様には会えない、みんなで四天王を倒そうというものです。
プラスチックの段ボールで竜神様を手作りし、仕掛けを作り、海賊の恰好で四天王に扮した盛り上げ隊のメンバーが、2,000Lの水を使って子どもたちと本気の水鉄砲まつりを開催しました。
大会中には、協賛企業から子どもたちにジュースやアイスの差し入れがあったり、水鉄砲まつり終了後には、本物の竹で作ったそうめん流しをおこなったり、子どもたちが思い出に残るようなリアルなイベントを成功させ、水島の夏を盛り上げました。
いす1グランプリ水島
いす1グランプリとは、一つの椅子にまたがり、1チーム3人のグループで2時間走り続ける耐久レースです。
元々京都府が発祥地で、シャッター街の街を活性化させようと始まったイベント。
2015年、盛り上げ隊のメンバーがこんな面白いことがあるよ、水島でもやってみない?とメンバーに持ち掛け、どうやったらできるかとみんなで考え実現させたのです。
コンセプトは、水島の街を全国に知ってもらい、1人でも多くの人に足を運んでもらうこと。
全国で開催されるこのイベントは、地域によっては多くても30~40組で開催できるのですが、なんと水島は80組以上のグループが集まり、日本最大のいす1グランプリになりました。
コンセプト通り多くの人々が県外から訪れ、テレビ局やタレント等も参加し、このいす1グランプリが水島の地名度を上げたのです。
水島コンビナートの企業も数多く参加し、新入社員研修として、いす1グランプリを取り入れているところもありました。
コロナ禍などもあり、現在は休止している行事ですが、再開を望む声が多く寄せられているイベントのひとつです。
ミズシマ夕暮れガーデン
水島は飲み屋街も多く、昔は怖いイメージを持たれる人もいたようです。
しかし実際はそんなこともなくとても住みやすいし、美味しいお店もたくさんそろっているのです。
そこで水島のイメージアップと水島で頑張っているお店を応援して、1人でも多くのお客さんに足を運んでもらおうというコンセプトのもと2016年からマルシェを開催しました。
太陽が沈み始め辺りが暗くなってきた夕暮れ時に、ミズシマ盛り上げ隊の隊員たちが公園内をライトアップし、芝生の上にソファを設置します。
ソファは隊員たちが地元の人々に声をかけ、いらなくなったものを回収しリサイクルしたものです。
水島の夜景をスライドショーにして映し出したり、イベント看板を地元の高校生に書道パフォーマンスで書いてもらったり、手作り感満載の会場をメンバーが力をあわせて作り上げます。
会場内は、地元で頑張っているお店の人々がこのイベントのために特別に出店。
会場に来た人々は、美味しいお酒や料理を味わいながら、プロのバンド演奏をバックミュージックに友達や家族とゆったりとした時間を過ごしていました。
このイベントも毎年数百人が訪れ、人気のイベントとして水島に定着させました。
みずこんPARTY
水島婚活PARTY(通称みずこん)は、倉敷市の委託事業として、2011年から開催されました。
2013年までの3年間は、水島みらいを考える会が主体となって開催していたそうです。
2014年第4回の計画時に、ミズシマ盛り上げ隊にオファーがかかりました。
オファーを受けたときに、初めての試みだが、すべて自分たちが考える内容で開催させてほしいとお願いし、どうやったら参加者に喜んでもらえるかと、毎日のようにミーティングを重ねたのです。
少子化対策のコンセプトに基づき、人見知りな若者たちの気持ちに寄り添い、サポートしながらミズシマ盛り上げ隊オリジナルの婚活イベントを作り上げました。
そのかいがあり、たくさんの人々が参加し、多いときには80%以上のカップル成功率をおさめ、結婚した人もいます。
12回目を迎えた2023年は、新たにみずこんPARTY Bサイド『奇跡のクリスマスBBQ』を企画し、ミズシマ盛り上げ隊ならではの発想で、100%のカップル率を達成しました。
ミズシマ盛り上げ隊の隊長について
初代隊長は、尾崎勝也(おざき かつなり)さんでした。
2023年2月現在の隊長は、二代目の植田充彦(うえだ みつひこ)さんです。
リーダーシップと行動力にあふれ、持ち前の明るさで人々を引き付けています。
植田さんの話力には説得力があり、仲間たちからは「アニキ、アニキ」と呼ばれ、絶大な信頼を寄せられています。
そんな植田さんに、ミズシマ盛り上げ隊についてお話を聞いてきました。
ミズシマ盛り上げ隊 隊長 植田充彦さんにインタビュー
ミズシマ盛り上げ隊の隊長をしている植田充彦さん。
どのような熱い想いでミズシマ盛り上げ隊の活動をおこなっているのでしょうか。
インタビューをしてきました。
ミズシマ盛り上げ隊を結成した経緯
ミズシマ盛り上げ隊ができた経緯を教えてください。
植田(敬称略)
15年前に、当時仲が良かった3人で水島のカフェ「ミルクラウン」でコーヒーを飲んでいたんです。
- 「なんか最近日本の若者が元気ねーよなあ」
- 「日本を元気にしたいなあ」
- 「でもまずは地元水島を盛り上げてからじゃな」
- 「よっしゃー!そこからスタートじゃあ!」
と意気投合したのが始まりです。
そして講演会を開催しようと動き始め、同じ志をもつ仲間がだんだんと集まり、「ミズシマ盛り上げ隊」を結成しました。
過去15年間で、さまざまなイベントを企画実行し、多いときには1年間に4つのイベントを掛け持ちしています。
そんなにたくさんのイベントをされていたのですね。印象に残っていることはありますか。
植田
講演会を開催したのがミズシマ盛り上げ隊の始まりなんですが、その講演会で私が司会をすることになりました。
司会者として本番当日が講師と初顔合わせなのは失礼だと思い、全国を飛び回っている「てんつくマン」に会えるかどうかもわからないわずかな情報をもとに、仕事終わりに小豆島にフェリーに乗って会いに行きました。
幸運にも一瞬だけお会いでき、「今度倉敷で開催する講演会の司会を務めさせていただく植田です。よろしくお願いします!」と一言だけ伝えて帰ろうとしたときに、「てんつくマン」から「アニキ!熱いな!」と声をかけてくれたことが印象に残っています。
あの熱い想いが私たちの原点のような気がします。
ミズシマ盛り上げ隊の隊員たちについて
ミズシマ盛り上げ隊の隊員は、どんな人たちですか。
植田
ミズシマ盛り上げ隊は、組織であって組織ではない自由な団体です。
自主的に集まってきた隊員たちなので、イベントを開催するときも、できる人ができることをできる範囲でするようにしています。
ものづくりが得意な人、インターネット関係が得意な人、印刷や広報に強い人、司会が得意な人、企画能力に長けている人、それぞれが特殊能力をもっている個性派ぞろいの特別なグループです。
私たちは、子どもたちがあんな大人になりたいと思ってもらえることを目指しているので、なんでも本気で取り組んで本気で楽しんでいます。
最近のイベントについて
最近手掛けたイベントはどのようなものがありますか。
植田
若い人たちだけではなく、中高年むけのパーティーを開催してほしいという要望をうけ、今回新たな試みとしてみずこんPARTYのBサイド「奇跡のクリスマスBBQ」を企画。
応募資格は、40代~60代の紳士淑女の独身の人々で、婚活にこだわらず、今後の人生を豊かにするための出会いの場として開催しました。
参加者には、おしゃれな隠れ家でバーベキューを楽しみながら、ワイワイと楽しいひと時を過ごしてもらい、カップル率100%で満足して帰ってもらいました。
これからも地域の人々が望むようなイベントを開催していきたいと思います。
地域のために頑張れる原動力とは
植田さんが、地域のために頑張れる原動力はなんでしょうか。
植田
ボランティアとしてやっていると、大変な思いをすることもあります。
他の人からみたら、どうしてそこまでできるのかと思うこともあるでしょう。
ですがそのような経験を通して、たくさんのことを学ばせてもらっていると思っています。
もちろん、街のため、みんなのため、社会貢献としてやっているのですが、実はすべて自分たちのためになっているのです。
お金を払っても経験できないようなことを経験させてもらっているのです。
社会活動はすればするほど楽しいし、スキルアップして人間力が上がっていきます。
ミズシマ盛り上げ隊として活動することで、同じ目標をもったかけがえのない仲間たちにも出会えました。
これは一生の宝物だと思っています。
これからについて
これからなにか考えていることはありますか。
植田
今後は、もっと若い人たちに参加してもらって、私たちはバックアップをしていきたいと考えています。
高校生や大学生にも盛り上げ隊に入ってもらい、地域のために、自分のために、ステップアップする経験をしてほしいです。
ただ最終的には、日本を元気にしていきたいという気持ちは変わりません。
見返りを求めない無償の愛で、これからも地域の人や子どもたちに喜んでもらえる活動をしていきます。
おわりに
別のミズシマ盛り上げ隊の隊員にも話を聞いたところ、「ミズシマ盛り上げ隊の活動は、僕の癒しです」という言葉が返ってきました。
地域や人々のための活動が、仲間とともに力をあわせてやりとげることで、実は自分の心の拠り所になり、生きるための原動力になることもあるのでしょう。
ミズシマ盛り上げ隊は、地域のための活動はもちろんのこと、仲間との絆や友情も築き上げているのだと感じました。
私たちが住む社会には、さまざまなボランティア団体が活動しています。
自分ができる範囲で身近な所からチャレンジしたり、仲間になったりすることで、普段と違った楽しい未来が見えてくるかもしれませんね。