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焼き菓子担当の堂本佳世子さんとジャム担当の橋原絵美さんへインタビュー
長屋門を改装した、他の工房とはひと味違う三宅商店カフェ工房で働く、焼き菓子担当の堂本佳世子(どうもと かよこ)さんと、ジャム担当の橋原絵美(はしはら えみ)さんにお話しを聞きました。
三宅商店を支える職人
おふたりの経歴を教えてください。
橋原(敬称略)
ふたりとも関西の同じ製菓学校の出身です。
これまで私たちは、本町の三宅商店、林源十郎商店、酒津の水辺のカフェ三宅商店で勤務し、三宅商店カフェ工房のオープンに合わせてこちらに来ました。
働いていて驚いたのは、岡山は果物の種類が多いということです。
県外出身だからこそ、果物の贅沢(ぜいたく)さを感じます。
なかでも桃やブドウは高級なイメージがあったのですが、岡山ではいただける機会も多く驚きました。
果物の身近さがいいなぁと。
ジャムや焼き菓子も季節のものを
ジャムや焼き菓子にこだわりはありますか。
橋原
ジャムは旬の果物を使って、暮らしや季節に沿ったものを作っています。
少し傷んでいるなどで、通常だと店に出回らず廃棄される果物を適正価格で買って使っています。贅沢に使用させていただいています。
たとえば桃だとシーズンで合計2トンほどを扱っていて、すべてこの工房で皮むき、種取りなどの処理もしているんですよ。
さらに果物の皮も有効活用して、水辺のカフェ三宅商店のピザ生地作りに使用しています。
皮を使って自家製酵母を作り、ピザ生地に使っているんです。
堂本(敬称略)
季節によって扱う果物は異なります。
夏は桃、これからの季節だとピオーネやイチジク、秋になると栗が出てきます。
焼き菓子のなかにも季節の果物を練りこんでいるんですよ。
パウンドケーキの食材で、初夏は新ショウガ、夏は白桃、冬はレモンと、季節感を出しています。
フィナンシェやフロランタンも季節に合ったものを入れています。
ときには苦労も
苦労することはありますか。
堂本
果物を扱っているので、その点で苦労することがありますね。
たとえば同じ桃でも品種が違えば甘さが変わってきます。
扱うものによって酸味を加えるなどの調整が必要になりますし、品種の把握が必要ですね。
他にも気温や湿度で焼き上がりが変わるので、こちらも調整が必要です。
農家とのつながりを大切に
果物は岡山や近隣の農家から仕入れているんですよね。
橋原
はい、地元の契約農家さんから仕入れています。
三宅商店は農家さんとのつながりや連携を大切にしたいという想いから、直接農家さんのところへ行くこともあるんですよ。
直接農家さんにお会いすると、工房にいるだけでは知れないことも知ることができます。
無農薬や減農薬で作物を育てている農家さんにお会いすると、より手をかけて愛情込めていることを感じます。
レモンの収穫の手伝いをしたこともあります。
橋原
ジャム作りにはイタリア製の真空窯を使っています。
この窯だと中を真空状態にすることができ、70度の低温でジャムを炊くことができます。
真空で炊くことで色味をきれいなまま保つことができるんです。
また真空ですることで香りと風味を損なわないので、農家のかたにも喜ばれます。
堂本
自分たちが育てた果物を使って、こんなにおいしく作ってくれるんだと。
愛情込めて育てた果物が、形になって売られていくのを見て喜ばれる農家さんが多いです。
喜ばれる姿を見ると、私たちも頑張らなくちゃと責任を感じます。
ジャムと焼き菓子の楽しみかた
どのような想いでジャムや焼き菓子を作られていますか。
橋原
元々、酒津の水辺のカフェ三宅商店でパンを焼いていました。
パンに合うものを、と考えたときにジャムや焼き菓子を作ろうって。
そこからジャムと焼き菓子が誕生しました。
そして林源十郎商店で作っていましたが、三宅商店カフェ工房ができてからはこちらで作っています。
カフェの味を家でも楽しんでほしいという想いで作っています。
堂本
たとえばジャムはおうちでパフェ作りに使ったり、お料理に添えたりして使っていただいています。
もちろんお土産としても使っていただきたいです。
お土産でもらっておいしかったから、今度は自分用に購入するというかたもいらっしゃいます。
オンラインショップがあるので全国どこからでも買うことができます。
橋原
他にはギフトとしても使っていただけたらうれしいですね。
赤と白の2層のジャムがあるのですが、こちらは紅白ということで引き出物や内祝いとして使われることがあります。
母の日ギフトとしても人気ですね。
おわりに
系列店のカフェメニューの一部、ジャムや焼き菓子などの加工品を手掛ける三宅商店カフェ工房。
お土産やギフトとしても使われ、オンラインショップもあるので、取材するまでは鉄鋼の大きな工場があると勝手に想像していました。
しかし実際は昔から地域にとって大切な存在だった建物を改修し、工房としています。
地域の宝である建物を守りながら、農家とのつながりを大切にしているカフェ工房は唯一無二の貴重な工房ではないでしょうか。
酒津の小さな工房で作られたジャムや焼き菓子などが、これからも多くのひとを笑顔にしていってほしいですね。