「水辺のカフェ 三宅商店 酒津」の井上真吾店長にインタビュー
三宅商店の想いやピザを始めた経緯などについて、店長の井上さんにインタビューをしました。
インタビューは2021年6月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
三宅商店の1号店は倉敷美観地区にありますが、なぜ2号店を酒津にされたのですか?
井上(敬称略)
酒津が倉敷の水の起点になっていて町が広がっていくので、この地にしました。
もともと民家だった建物を改装したんです。
家の周りのトタンを取り除いて、窓をつけて庭が見えるようにもしました。
社長は考えるのが好きなので建築士のかたに相談したんですよ。
冷暖房は最小限に設置し、基本的に窓を開けています。
川が近くにあるので、自然と風や季節を感じてもらえます。
食材も季節のものを取り入れているので季節を感じてほしいです。
従来のカレーやスイーツなどのメニューに加え、新たにピザを始めた経緯を教えてください。
井上
三宅商店がオープンしたのは2010年で、実はオープン時からピザを提供したい想いはあったんです。
しかし資金と人手がかみ合わず断念しました。
転機となったのは、ここ三宅商店から近い場所で旧原田邸を整備したことです。
古民家を改装した建物ですが、旧原田邸に三宅商店の事務所を移転し、ジャム工房を併設しました。
移転するまでは、今のピザ小屋が事務所だったんです。
そこで空いた事務所を改装し、念願のピザを作る場所を設置することになりました。
自家製酵母からピザを作るのは手間がかかると思うのですが、なぜ自家製にこだわるのですか?
井上
三宅商店ではジャムを作っていて、その際に出る果物の皮を使っています。
最近よくいわれるSDGsですね。(本来捨てるものも)最後まで利用しています。
使う果物は季節によって変わるので、発酵スピードや酵母の強さが果物によって違うんです。
時期によっても製造の条件が変わってきます。
夏には桃やブドウで作ってみようと思っているんですよ。
また発酵させて酵母水を作るのですが、若干風味はあっても味には影響がないようです。
発酵させるときに酵母が泡を作り、フルーツの皮の周りに泡が出てきます。
発酵の力が強いものは、容器の蓋を開けると「ボンッ」と音がするんですよ。
イーストと発酵の工程は同じですが、自家製酵母のほうが発酵の力は弱く調節が必要です。
イースト菌を使うと手間がかからず楽ですが、使えるもの(果物の皮)は使おうという想いです。
苦いですよね。発酵で糖がなくなっていて、苦みが残るようです。
そのためピザの生地には、果物のフルーティーさがでないみたいです。
食材にもこだわりがありますか?
井上
小麦粉は岡山県産のものを使っています。
ピザのメインの食材も岡山県産です。
ピザは季節で変わる予定で、基本的に高梁川流域の食材を使用しています。
新見市で捕れたイノシシや、瀬戸内の鯛や連島の蓮根などを使っていますよ。
クアトロフォルマッジは、ハチミツの代わりに当店の自家製ジャムを使っています。
他に庭にもこだわっていて、庭師にお願いして作ってもらいました。
ピザを始めるにあたり庭も変えたんです。
以前は盛り土をしていたのですが、今回減らしてもらって目通しがよいようにしました。
今後取り組みたいことはありますか。
井上
今後はピザに力を入れていきたいですね。
庭もあるのでクラフトビール片手にピザを食べていただいて、大人のピクニックを楽しんでいただきたいです。
ピザは夕方から予約にして庭で提供したいと思っています。
夕方がやっぱりいいんですよ。夕日が沈んできて、庭から夕焼けが見えるんです。
夏でも夕方は割と涼しいんですよ。
他には、酒津公園があるので配達してそこで食べていただくものいいなぁと構想しています。
ただ、これらのことは新型コロナウイルスの影響で叶えられていないので、終息後には実現させたいですね。
新たな三宅商店と今後にも注目!
カレーやスイーツで人気な三宅商店がはじめたピザは、他にはないこだわりが感じられました。
ジャムを作る工程で出る果物の皮を余すことなく使って生まれるピザ。
イースト菌を使わずあえて大変な工程を選んで酵母から作るのは、資源の有効利用と食に対する情熱があるからではないでしょうか。
さらに酒津の自然を感じながら食事をしてほしい、という想いも三宅商店ならではです。
三宅商店だから提供できる自家製酵母のピザ生地を使った、地元食材たっぷりのピザを味わいに行きませんか。