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日本綿布株式会社、川井社長にインタビュー
川井眞治社長に井原デニムの魅力や地域とのつながりについてお話を聞きました。
井原デニムについて教えてください。
川井(敬称略)
井原は参勤交代の宿場町で栄えた山陽道にありました。
三備地区では350軒の機屋がともに協力しあい、備後絣(びんごかすり)を作っていました。
備後絣の模様に織り込まれている藍がデニムの始まりです。
丈夫で厚めの備中小倉織や、備後絣を織る伝統技術からデニムが誕生しました。
三備地区は、藍染めや染色で戦後の洋服化における縫製加工やデニム生地生産地として地位を確立しましたが、1990年(平成2年)以降アパレル産業全体の低価格競争に飲み込まれていきます。
三備地区に350軒あった機屋は、2023年(令和5年)の現在では14軒です。
三備地区では量産型低価格ではなく、非量産型、高付加価値型の製品市場で、ネットワークを構築し府中、福山、井原はデニム生地を、児島がジーンズを縫製する形を築き上げていきました。
三備地区の特徴はジーンズ製品を個々の企業ではなく、地域で生産することです。
安価な輸入品に対する地域連携の具体例であり、中小企業が存続するための手段ともいわれています。
三備地区による「メイドインジャパン」の力ですね。
井原から海外へ
日本綿布のInstagramは英語表記ですが、これは海外のお客さんに向けたメッセージですか?またInstagramの更新は川井社長がされているのですか?
川井
Instagramの更新はスタッフがしています。
そうですね、海外お客さん向けの意味もあるかもしれません。
アメリカではニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ。
ヨーロッパでは、パリ、ロンドン、ミラノなど海外のお客さんも多いですね。
井原デニムが世界中で求められて、使われています。
井原デニムが誕生して、海外に販路を広げていき、長い付き合いとなっています。
良いものを作り、海外からも求められるのは必然でしょう。
海外で、高品質デニムの取引が長く続いているのは信頼関係が保たれているからです。
シャトル織機の魅力
デニムづくりで一番魅力的な工程はどこですか?
川井
シャトル織機がデニムを織る工程ですね。
2023年(令和5年)現在、日本綿布では約150台のシャトル織機が現役で活躍しています。
シャトル織機のデニムを織る音は規則的にリズムを刻み、とても心地よいものです。
製造が終了した織機でデニムを織る
シャトル織機は、今はもう製造中止になっているそうですが。
川井
日本綿布で使っているタイプのシャトル織機は、現在では製造されていません。
近隣の機屋が工場をたたむ話があれば、シャトル織機を買い受けました。
シャトル織機が壊れてしまったら、セルビッチデニムはもう作れないのでは?
川井
シャトル織機が壊れてしまっても大丈夫。
シャトル織機が壊れる場所はだいたい決まっていて、その壊れたところを直す技術はもう確立しています。
いまあるシャトル織機を大切にメンテナンスしながらデニムを作ります。
効率を考えて最新の織機に買い替え、生産性を上げるのが一般的な考えですが、スピードはゆっくりでも、一番人間的な動きをするのがシャトル織機。
シャトル織機と熟練した職人の技術で、人の手で織られたようなデニムができます。
シャトル織機と熟練職人でないと出せない風合いが、そのまま日本綿布のデニムらしさとなり井原デニムの価値をさらに高めています。
オーガニックコットンにもこだわりがあるそうですね。
川井
日本綿布で使っているオーガニックコットンは、トルコで育てられています。
トルコのオーガニックコットンは、収穫期になりコットンがはじけてコットンボールになると、地中海から吹く潮風が農薬代わりになり茎やがくを枯らします。
コットンの栽培には育つまでには大量の水が、収穫期には乾燥した気候風土が必要です。
多くは、コットンがはじけてコットンボールと呼ばれる状態になると、農薬を使って綿以外の部分を枯らし綿を摘みやすくします。
いっぽう、土地の気候を利用して安全に配慮した方法で栽培されたコットンがオーガニックコットン。
オーガニックコットンと呼ばれるコットンは、国が定めた認証機関で、世界基準をクリアしていなければなりません。
質の良いオーガニックコットンを使うことが日本綿布のこだわりです。
ファクトリーショップをオープンされましたね。お客さんの反応はいかがですか?
川井
とても好評ですよ。
海外のメーカーには、たいてい工場併設のファクトリーショップがあります。
日本綿布も同じようにファクトリーショップを建てたのです。
日本綿布では、今は縫製をしていないとお聞きしましたがファクトリーショップの商品はどこで作っていますか?
川井
ファクトリーショップに置いてある商品は、EDWIN(エドウイン)など国内ジーンズメーカーや、海外のお客さんの商品です。
日本綿布のデニムを使っている商品がお店で取り扱う条件。
私が理事長をしている井原被服協同組合と、備中織物構造改善工業組合の会員にも作ってもらっています。
10年前、井原のデニムをもっと知ってもらいたいと最初にやった仕事は、井原市長と井原駅に井原デニムストアを作ることでした。
井原デニムストアは井原被服協同組合が運営しています。
井原市や日本綿布、井原被服協同組合など地域の力で、井原デニムストアは十分な成果をあげました。
海外有名ブランドが最高品質と認める井原デニムの発信本拠地の役割を担っています。
そして10年後、日本綿布のファクトリーショップがオープンし、井原デニムの魅力を伝えるお店がまた一つ誕生しました。
地域とのかかわり
倉敷市児島はジーンズの縫製、井原はデニム生地でつながりがあると思いますが、倉敷とのかかわりはどうですか?
川井
すごくあります。
倉敷のジーンズメーカーとの取引があります。
BOBSON(株式会社ボブソン)や、BIG JOHN(ビッグジョン)など。
児島は学生服が出発点で、そこからジーンズに変わっていきました。
児島にもデニムや帆布の機屋がありましたし、そのルーツは児島も井原も同じ備後絣。
三備地区のなかでそれぞれの役割を持ち、ジーンズ産業を育ててきました。
児島と井原は一緒に歳を取った、仲良しの関係です。
児島のジーンズメーカーが頑張ってくれて、おかげで井原もうるおった。
ありがたいことです。
日本綿布のこれからの展望は?
川井
井原で最初は小さなことから始めて、大きくなってきました。
今、日本綿布で働く社員は65名。
自然な形で若い従業員に技術が引き継がれています。
100年以上続いた伝統技術を守りながら、おもしろいもの、新しいもの、個性的で斬新な生地作りをしていきたい。
まだまだやりたいことはたくさんありますよ。
おわりに
高梁川流域、水鳥が遊ぶのどかな小田川のそばに日本綿布があります。
社屋は近代化産業遺産に認定された趣のある外観。
デニムの機屋らしいジーンズが飾られたアメリカンな雰囲気の応接室。
川井社長も取締役経理部長の山本さんも、日本綿布のジーンズとオリジナルTシャツを粋に着こなしていました。
応接間には幼稚園児さんが書いた、工場見学お礼のかわいらしい手紙が貼ってありました。
近所のかたから、土地の使い道について相談も受けたことも。
近所からは親しみをこめて「綿布さん」と呼ばれています。
「いいところよ。ここは」と川井社長。
デニムの聖地にある日本綿布。
広島の府中、福山、倉敷の児島、そして井原から世界へ。
三備地区で生まれたデニムをもっと知ってほしいと思いました。
染まった糸はキリッとした藍色で目の覚めるような美しさ。
シャトル織機がリズムを奏でながら、デニムを織っていくようすは軽快です。
ていねいに織られたデニムの優しい手ざわりが忘れられません。
日本綿布のデニムで作ったジーンズの裾を少し折り返して、おしゃれに履いてみたいと思いました。
日本綿布株式会社のデータ
団体名 | 日本綿布株式会社 |
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業種 | デニム・先染め服地製造販売 |
代表者名 | 川井眞治 |
設立年 | 大正6年1月2日 |
住所 | 岡山県井原市東江原町1076 |
電話番号 | 0866-63-0111 |
営業時間 | |
休業日 | 土、日、祝日 |
ホームページ | 日本綿布 |