目次
pain porte(パンポルト)の戸澤由加里(とざわゆかり)さんにインタビュー
真備町でお店を始めた経緯や店名の由来について
真備町でお店を始めた経緯を教えてもらえますか。
戸澤
実は、たまたま、なんです。
下調べでこの場所に来た時に、駅や倉敷市真備支所も近かったので、町の中心街なのでにぎわっていると思いました。
オープンした日の2013年7月19日は、近所のかたが来てくれました。
けど、そのあとはなかなかお客さんは増えず…。
戸澤
私たちは必要以上に忙しくなるのは避けたかったので、広告も大きく入れたりせず、自分たちで宣伝はしませんでした。
けど、近所のかたが「おいしいから、お友達に伝えたよ」と言ってくれて。
口コミでどんどん広がっていって、売り上げも順調に延びていきました。
SNSも全くやってなかったのですが、お客さんに「やったほうがいいよ!」と言われて、TwitterやInstagramを始めました。
お店がオープンしてから約3年後の2016年から2017年にSNSを始めたので、結局遅かったですけどね(笑)
戸澤
「porte(ポルト)」は「扉」という意味なんです。
お店の扉を開いたときにたくさんのパンが並んでいて、「わぁ!!」と思って喜んでもらえるようなお店にしたいという思いがこもっています。
あと、私たちの名前の「戸澤」の「戸」ともかけているんですよ。
おいしく食べてほしい。パンポルトのこだわりについて
戸澤
私たちのお店はおすすめのパンはないんです。
どのパンも自信をもって作っています。
みなさん、パンの好みってそれぞれじゃないですか。
ちっちゃいお子さんから年配のかたまでおいしく食べてもらえるパンを揃えるよう目指しています。
パンは、お米に次ぐ主食ですよね。
日々を供にするものなので、おいしく食べてほしいんです。
私たちのお店は、固いものからやわらかいものまで揃えているので、好きなパンをぜひ開拓してほしいって思ってます。
また、以前より焼きたてを提供できるようこだわっているので、もし自分の好きなパンがなくても焼きたてパンがあるはずです。
新しいパンにもどんどん挑戦してほしいですね。
平成30年7月豪雨で被災。営業再開を決めた思いについて
戸澤
平成30年7月6日の夜、避難しようか悩んでいたら町内会長さんが「逃げたほうがいい」と言ってこられたんです。
真備総合公園へ避難しようと向かったら、すでに大渋滞でした。
宮田橋を抜けて実家の玉島へ向かおうとしたのですが、宮田橋は浸水が始まっていて通れませんでした。
真備町から出るのはすでに難しかったので、真備町内の高台へと避難し、ガソリンが少なかったのでエンジンを切って寝ました。
もちろん、ほとんど寝られなかったですけど…。
明るくなって我が家の方面をみたとき、我が家が浸かっているのが見えました。
東から大回りをして玉島の実家へ帰った時、びっくりしましたね。
ごく普通の日常がそこにはあって、真備町とは別世界のように感じました。
結局、2階もひざの部分までつかっていて天井もぬけ落ちたり、1階の厨房の扉からは自転車が流れて入ってきてたりと悲惨な状態でした。
それから、たくさんのひとに手伝ってもらって片付けが始まりました。
また真備でお店を再開しようと思ったのはどうしてでしょうか。
戸澤
この場所を売って、また別の場所で営業を再開したほうが早くて楽だとは思ったんです。
どうお客さんに思われているかわからなかったし、お客さんもお店がなくなっても困らないと思っていました。
でも、平成30年7月豪雨後、お店の片付け作業の中、たくさんのかたがパンポルトのSNSに応援のメッセージを寄せてくれたんです。
被災されたかたでご自身の片付けがある中、お店を心配してようすを見に来てくれて、「また再開してほしい」と言っていただきました。
私も主人も「これからどうなるかわからんけど、やってみないとわからないよね」ってなって、再開を待ってくれてるひとがいるなら真備で営業を再開したいと決意しました。
平成30年7月豪雨から3日後だったと思います。
知り合いのパン屋さんの厨房をお借りしてパンを作り、被災した店舗のすぐ前の駐車場にプレハブを設置して、平成30年9月19日に仮店舗での営業を再開しました。
私は主にプレハブで販売を担当していたのですが、「またパンが買える…」と泣いて喜んでくれたかたがいたんです。
そのかたがいたから、私もここまで頑張ってこれました。
被災前はお客さんとお話をする機会がほとんどなかったのですが、直接会ってお客さんとお話しする機会が増えて交流できたのがよかったですね。
直接お客さんの思いを知ることができ、私たちのお店を必要としてくれていることがわかって嬉しかったです。
真備町内の交流を深めるイベントについて
「まびフェス」はいいイベントでしたよね。
戸澤
真備町内で被災しなかったひとが、被災したひとになんて声をかけたらいいかわからないと、家にこもりがちになったという話を聞きました。
ボーカルユニットのimim(イムイム)が、被災した人も被災してなかった人もみんなが集まって楽しめるイベントを企画したんです。
imimと町の人と企業さんとで作り上げて開催された「まびフェス」にたくさんのかたが来て、笑顔で楽しんでいる姿を見れました。
本当にいいイベントだと思いましたね。
令和元年6月30日開催「まびフェス」~応援してくれた真備町のかたに恩返しがしたい。ボーカルユニット・imim(イムイム)が企画した思い繋がるイベント
令和元年7月に店舗での営業が再開。そのときの思いについて
そのときの心境はどうでしたか。
戸澤
平成30年7月豪雨から1年間は「やらんといけん(※)」という思いで、突っ走ってきました。
リニューアルオープンの日が決まったけど、気持ちも準備も追いついていけないところがあって、何もないのに涙が止まらなくなることが増えました。
それまでは全く泣かなかったのに。
きっと気持ちが不安定だったと思います。
今は少し落ち着いてきましたが、やはり気持ちの面ではまだ波がありますね。
被災地から今、伝えたいこと
今、被災地から改めて伝えたいことはありますか。
戸澤
やはり、避難することのハードルが少しでも低くなるよう、情報をもっと明確にしてほしいと思います。
「ペットや赤ちゃんがいるから避難するのは、ハードルが高い」という声も聞きました。
避難所マップみたいなのを作って、この避難所はペットの受け入れ可能ですよとか、どういう支援が受けられるかがわかればと思いました。
避難するのは早くても大丈夫という報道をもっとしてほしいと思います。
また、今回の被害の報道をみて、助けたくても助けることができない苛立ちや心苦しく思っている真備町のかたも結構いらっしゃいます。
今は無理して焦らず、それぞれできることをコツコツしていけたらと思いますね。
今後のパンポルトについて
最後に、今後のお店の展望について聞かせてください。
戸澤
真備町のかたに支えられてここまで来れたので、感謝の気持ちを真備復興への願いをこめて、新銘菓のマドレーヌとタケノコクッキーを作るために、クラウドファンディングに挑戦しています。
これからもパンポルトのパンが、みなさんの暮らしの供となれたらと思います。
おわりに
筆者が大好きなパン屋さん、「pain porte(パンポルト)」。
平成30年7月豪雨前は、戸澤さんご夫妻とお話をしたことはなかったのですが、仮店舗の営業時にパンを買いに行ったときに声をかけていただいたのがキッカケで、お話しするようになりました。
「お客さんの要望を取り入れているうちに、主人がどんどんパンの種類を増やしていって、以前より棚を減らしたのに困っているんですよ」と、笑いながら話す由加里さん。
仲のいい本当に素敵なご夫婦だなぁ、と改めて思いました。
まだまだ現実問題としても気持ち的にも苦しいこともあるし、本当の意味での真備町の復興は遠いかもしれません。
でも、真備町には思いのこもったおいしいパンを作る、優しいご夫婦が経営するパン屋さんがあります。
真備町を盛り上げる明るいご夫婦が経営するパン屋さんで、お気に入りのパンを見つけに足を運んでみてくださいね。
pain porte(パンポルト)のデータ
名前 | pain porte(パンポルト) |
---|---|
住所 | 岡山県倉敷市真備町箭田1174-1 |
電話番号 | 086ー451ー2512 |
駐車場 | あり |
営業時間 | 午前8時~午後5時 |
定休日 | 火、水 |
支払い方法 |
|
予約の可否 | 可 |
座席 | |
タバコ | 完全禁煙 |
トイレ | |
子育て | |
バリアフリー | |
ホームページ | パンポルトInstagram |