高梁川流域にて、今から200年以上前の江戸時代から脈々と受け継がれてきた伝統芸能「備中神楽」。現在も各地に神楽社や同好会(備中神楽を演じる団体)があり、地域のお祭りなどで神楽を奉納しています。
神楽の魅力をより多くの方に知ってもらうため、毎年開催されている「備中神楽鑑賞会」が、2026年5月24日(日)に倉敷市芸文館にて開催されました。
30回の節目に華を添える特別ゲスト、石見神楽(いわみかぐら)との貴重なコラボレーションなど、見どころたっぷりの鑑賞会をレポートします。
記載されている内容は、2026年6月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
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目次
備中神楽鑑賞会について

備中神楽鑑賞会は、備中神楽保存振興会により開催される備中神楽の鑑賞会で、毎年1月頃に岡山公演、5月頃に倉敷公演が開催されています。

30回目となる倉敷公演は、2026年5月24日(日)に倉敷市芸文館にて開催されました。今回の公演は30回という節目であり、賛助出演として島根県の石見神楽が公演に花を添えました。
備中神楽とは
備中神楽は、備中地方(岡山県西部)に古くから伝わる「荒神信仰」にその起源があると言われています。その土地の荒ぶる神々を鎮める「荒神神楽(こうじんかぐら)」では、榊舞(さかきまい)や猿田彦舞(さるだひこのまい)に神事としての面影が見られます。

今から約200年前の江戸時代、現在の高梁市成羽町出身の神官・西林國橋(にしばやし こっきょう)によって、現代に伝わる演劇性に富んだ「神代神楽(じんだいかぐら)」が考案されました。
大蛇退治(おろちたいじ)に代表される、出雲神話をモチーフにした神代神楽の登場により、神事から民衆の娯楽としての色合いが強くなっていきます。
また、1979年には重要無形民俗文化財の指定を受けています。
当日の様子
正午に開場し、会場の倉敷市芸文館ロビーには、開演までの時間も楽しめるコーナーが用意されていました。

こちらは、備中神楽に使われる「神楽面」の製作実演コーナー。職人の方が実際に木を削り出してお面を作っています。

物販コーナーでは、備中神楽にちなんだ「備中神楽面最中」や、お弁当などが販売されていました。

開演時間が近くなったので、ホールへ移動。自由席なので、それぞれ好きな席で鑑賞します。

伊東香織(いとう かおり)倉敷市長も来場。大勢の観客とともに備中神楽を鑑賞し、幕間ではあいさつもありました。

神事としての「舞」
午後0時30分、備中神楽鑑賞会が開演しました。
最初に場を清め祓(はら)う神事としての意味を持つ「舞」が奉納されます。
榊舞

一切を清めるために舞う「榊舞(さかきまい)」。
神職の衣装を纏った舞い手が、太鼓たたきと共に神楽歌を唱えながら舞います。
猿田彦舞

ハイライトとして奉納される「猿田彦舞」。
天狗をイメージさせる鼻高面をかぶった猿田彦尊(さるだひこのみこと)が、扇子、刀、薙刀(なぎなた)を手に舞う勇壮活発な舞です。
猿田彦尊は、天孫瓊瓊杵尊(てんそんににぎのみこと)を先導した「道開き」の神として、舞には神楽全体の悪魔祓いの意味が込められています。
息の合った華麗な剣さばきに、会場からも拍手があふれます。

演劇性に富んだ「神代神楽」
続いて演じられたのは、備中神楽を代表する「神代神楽」。
江戸時代の神官・西林國橋が考案した、出雲神話を基に演劇性や娯楽性を高めた神楽です。
国譲り
古事記や日本書紀にも記載されている神話で、大国主命(おおくにぬしのみこと)が統治していた葦原中国(あしはらなかつくに:日本列島)の支配権を、高天原(たかまがはら:天上界)の神に譲り渡したエピソード(国譲り)を演劇風に仕立てた神楽です。

出雲大社に大国主命が祀られているのは、このエピソードに由来すると言われています。
前半のハイライトは、大国主命が観客に向けて「福の種」をまくシーン。いわゆる餅投げですがホールでの公演だったため、演出として数個が観客席に投げられました(終演後にロビーで、鑑賞者に福の種が配布されました)。

神社のお祭りなどで奉納されるときには、子どもから大人まで多くの人が福の種に群がり、大いに盛り上がります。
大国主命の息子、事代主命(ことしろぬしのみこと)が舞う「たいたいつり」。えびす様として親しまれている事代主命が、鯛を釣り上げるユーモラスな仕草で人気の高い舞です。

大蛇退治

備中神楽のクライマックスを飾る「大蛇退治」。
悪行を働いたために高天原を追いやられた素戔嗚尊(すさのおのみこと)が奇稲田姫(くしいなだひめ)を救うため、八岐大蛇(やまたのおろち)を退治する、演劇性に富んだ演目です。

途中、八岐大蛇に飲ませる毒酒を造る「酒造り」の場面には、酒造りの神で道化役として人気の高い松尾明神(まつのおみょうじん)が登場。時事ネタを織り込んだ軽妙な語り口で、会場を笑いの渦に巻き込んでいきます。

松尾明神は古事記や日本書紀には出てこない備中神楽のみに登場する神で、酒造りの場面は神楽が備中の農村部の娯楽であったことを今に伝えています。
石見神楽との共演

今回は30回目の節目にあたり、賛助出演として島根県浜田市より石見神代神楽 上府社中(いわみじんだいかぐら かみこうしゃちゅう)による石見神楽が奉納されました。
石見神楽は備中神楽と同様に、1979年に重要無形民俗文化財の指定を受けています。

鑑賞会のフィナーレを飾る大蛇退治の場面では、ステージ上を縦横無尽に這いまわる大蛇と素戔嗚尊による迫真の演技に、会場の観客からは大きな拍手が上がりました。

おわりに
筆者は以前より、倉敷市芸文館で備中神楽鑑賞会を開催していることは知っていましたが、鑑賞会に参加するのは初めてでした。ホールで鑑賞する備中神楽は、にぎやかなお祭りやイベントとはまた違った趣で、じっくりと腰を据えて鑑賞できました。
今回は石見神楽の賛助出演もあり、衣装やお囃子(はやし)など備中神楽との違いを比較しながら鑑賞するのも興味深かったです。
また、備中神楽・石見神楽共に、若い担い手の方が活躍しているのが印象的でした。地方の少子化や過疎化が叫ばれる中、地域の伝統芸能を次世代へ継承することを願います。
第30回備中神楽鑑賞会倉敷公演のデータ

| 名前 | 第30回備中神楽鑑賞会倉敷公演 |
|---|---|
| 開催日 | 2026年5月24日(日) 午後0時30分〜午後5時30分(午後0時開場) |
| 場所 | 岡山県倉敷市中央1丁目18-1 倉敷市芸文館 ホール |
| 参加費用(税込) | 前売り:1,500円 当日:1,800円 中学生以下・障がい者(付添人1名):無料 |
| ホームページ | 備中神楽倉敷社公式Instagram |















































山根 堅一/著. 備中神楽 (岡山文庫), 日本文教出版, 1972.9, 182p