バスに乗って、添乗員に連れられ効率よく名所を巡る…これが団体旅行のイメージではないでしょうか。
メジャーな場所に行く印象がある団体旅行ですが、まったく異なるスタイルで展開する「株式会社よしゐ屋BASE」が倉敷市に誕生しました。
地元のひとと交流し、体験を組み込むツアー「TAKAHASHIGAWA TRAVEL(高梁川トラベル)」を企画・運営する旅行会社です。
第一弾のツアーは民芸に着目。
ニッチな分野にあえてスポットを当てたモニターツアー「超体験型倉敷民藝を感じるエクスペリメンタルツアー」に招待されたので、参加してきました。
ツアー内容をしっかり紹介しますよ。
記載されている内容は、2023年5月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
TAKAHASHIGAWA TRAVELの特徴
TAKAHASHIGAWA TRAVEL(たかはしがわトラベル)は、他の旅行会社にはないユニークな特徴があります。
その理由となる、三つの特徴をまとめました。
- 旅行先は、主に高梁川流域
- ターゲットは外国人旅行者
- 現地のひとや参加者と交流し、五感で体験する
高梁川流域とは、倉敷市、総社市、早島町、浅口市、里庄町、笠岡市、矢掛町、井原市、高梁市、新見市が含まれる地域のこと。
通訳案内士がいるので、日本語がわからない外国人旅行者でも安心して参加できます。
地元密着で外国人向けの旅行サービスというだけでも、他社とは違うとわかるのではないでしょうか。
▼さらにこだわりポイントもひと味違います。
- 高梁川をテーマにしたツアーを実施
- ツアーのストーリーを感じてもらう
- ガイドや通訳のひと自身も魅力のひとつとして感じてもらう
2022年11月に実施された第一弾は民芸をテーマに開催されました。
▼ツアー行程
時間 | ツアー内容 |
---|---|
午前9時30分 | 語らい座 大原本邸に集合 |
午前10時 | 融(とをる)民藝店の店主 山本さんによる解説 |
午前10時30分 | 倉敷民藝館の館内ツアー |
午前11時15分 | 倉敷の町並みを楽しみながら向松寮へ |
午前11時40分 | 民芸の食器選び |
正午 | 巻き寿司づくり体験~実食 |
午後2時 | 手仕事の店 倉敷民芸と融民藝店へ立ち寄る |
では、ツアーの内容の前に案内人を紹介しましょう。
ツアーの案内人
第一弾のツアーにかかわったひとを紹介します。
株式会社よしゐ屋BASEの原浩之(はら ひろゆき)さんはカフェ「星の光の澄みわたり」を運営するなど、地域活性化に尽力しているひとです。
ツアーの冒頭のあいさつで、「TAKAHASHIGAWA TRAVELならではのストーリーを感じて、楽しんでほしい」と参加者へ呼びかけていました。
ツアーが円滑に進むように指揮をとっているのが、ツアー・コーディネーターの大浦翔太(おおうら しょうた)さん。
ツアーの案内誌にある大浦さんのコメントを要約します。
きれいな景色や写真映えするお店のグルメはインターネットや旅行誌で簡単に見られます。一方で、文化的なコンテンツはスポットライトが当たりにくいのが実情です。ツアーは案内人の魅力に深くまで踏み込んだ内容で、記憶に残るものです。
ニッチな分野にスポットライトを当てることで、他にはない、記憶に残るツアーになるのですね。
講師の山本尚意(やまもと たかのり)さんは、ツアーでは民芸について初心者でもわかりやすく説明してくれました。
山本さんは倉敷美観地区内の老舗民芸店「融民藝店」の二代目店主です。
原直子(はら なおこ)さんは、巻き寿司づくりの講師を務めました。
原さんの娘さんが学生の頃、お弁当に巻き寿司を作って持たせたエピソードがあるそうです。
その思い出もある巻き寿司の作りかたを参加者にレクチャーしました。
通訳を担うのは通訳案内士の千先ゆう子(せんさき ゆうこ)さん。
民芸の難しい説明もわかりやすく英語に通訳していました。
講師と参加者をつなぐ大事なポジションです。
千先さんの朗らかさとていねいな英語で、初対面同士の参加者でも緊張がほぐれました。
ツアーの内容
約5時間のツアーは大変内容の濃く、記憶に残るものでした。
倉敷出身の筆者でも民芸に着目して美観地区を巡ったのは初めて。
時系列にツアーの内容を紹介します。
語らい座 大原本邸で民芸について学ぶ
旅のはじまりは「語らい座 大原本邸」から。
敷地内のブックカフェで山本さんから民芸について学びました。
簡単に山本さんの説明をまとめます。
日本で民芸を広めたのは思想家 柳宗悦(やなぎ むねよし)氏です。
彼が民芸に出会ったのは、朝鮮からのお土産の器を見たときでした。
作者は不明でありながら、最先端の技術で作られた白い器に衝撃を受けたそうです。
そして日本にも同じようなものがあるのではと思い、各地を巡るように。
訪れた先で、彼は使い手にとってはまったく特別感がなく無造作に置かれている道具や木像などに出会いました。
しかし柳氏は、それらには暮らしのなかから生まれた美があり、価値のあるものと考えました。
柳氏が全国から集めた民芸品を納めている場所が倉敷民藝館なのです。
山本さんの説明を聞くと、なぜツアーで倉敷の民芸を取り上げたのか謎が解けました。
民芸品の魅力についても山本さんからレクチャーを受け、一行は倉敷民藝館へ。
倉敷民藝館で民芸に触れる
1948年に、日本で二番目の民藝館として開館した倉敷民藝館。
江戸時代後期の米倉を活用しています。
館内に入ると最初の部屋に岡山の民芸品が展示されていました。
現在でも使われているもの、生活からは消えてしまったものがあります。
倉敷民藝館内は通常、撮影禁止です。今回は特別に撮影許可をいただいています。
展示品をとおして、生活様式がすっかり変わったと気付かされました。
鑑賞中、ところどころで山本さんの解説が入ります。
刺し子が美しい衣類については、「おしゃれより布を丈夫にするために模様を入れました。でもそれが結果的に美しい仕上がりとなったんです」とのこと。
売り物ではなく家族のために、そして長持ちし、実用性を考えられて作られた民芸品は丈夫にすることが重要だったようです。
デザイン性は求められていないのですが、仕上がりは美しいものに。
山本さんの解説や鑑賞をとおして、日用品に潜む美に気付く大切さと、ひとびとの知恵に感心させられました。
倉敷民藝館には外国の民芸品も。
使い込まれて角が丸くなった椅子を眺めていると、持ち主が大切に使っていたと伝わってきます。
名も知らぬ職人がどのような想いで作ったのか、持ち主にどう扱われていたのか、想像しながら鑑賞するとより深く民芸品に触れられる気がしました。
巻き寿司づくりで民芸品を扱う
民芸品に触れたところで、次は巻き寿司づくり。
筆者は外国人参加者が巻き寿司を作るようすを撮影しました。
講師の原直子さんの指導のもと、参加者にとって初めての巻き寿司づくりへの挑戦でした。
海苔に酢飯を広げる作業に苦戦しているもよう。
上手にしゃもじを扱えず、手で押しながら広げる参加者も。
米が潰れていましたが、本人は楽しそうでした。
巻き寿司を切ったところで、自分のお気に入りの民芸の皿を選んで盛り付けました。
皿の形や色、巻き寿司の盛りかた、それぞれ違って個性が光ります。
多少形が悪くても一生懸命作った巻き寿司はおいしく感じるもの。
隣のひとと見比べながら、お互いを褒めたたえ、楽しい食事会となりました。
民芸店で民芸品を買う
食後は、二つの民芸店へ。
一店舗目に訪れたのは「手仕事の店 倉敷民芸」です。
おもに木と竹の民芸品を取り扱っています。
倉敷民藝館の展示品と違って、箸や木の椀、木べらなど、日常生活で使うものばかり。
急に民芸品が身近な存在に感じました。
二店舗目は講師の山本さんの店「融民藝店」へ。
こちらではガラスや焼き物の器も扱っています。
照明は必要最低限で自然光を生かしていて、倉敷民藝館と似ていました。
山本さんは倉敷民藝館の展示を「スポットライトを当てずに自然光を生かして展示しているため時間や天気によって見えかたが変わる」と説明されていました。
融民藝店もまるで倉敷民藝館のように、時間や天気によって見えかたが変わるのでしょう。
まるで民芸店のような芸術的なセンスも感じる店でした。
おわりに
約5時間の民芸に着目したツアーでは、目で見たり、舌で味わったりと体験が充実していました。
参加者同士の交流の場もあり、大浦さんの言葉のとおり、記憶に残るものでした。
筆者はこれまで数えられないほど、倉敷美観地区を巡っていますが、民芸の視点で町を見たことはありません。
筆者にとっては新しい倉敷との出会いでしたが、もともと存在していたのに気付けていないだけなんですよね。
地元のひとでさえ気付いていない部分を掘り下げて、体験と交流を交えて紹介してくれるTAKAHASHIGAWA TRAVEL。
今後、どのようなツアーが展開されるか楽しみですね。
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TAKAHASHIGAWA TRAVELのデータ
名前 | TAKAHASHIGAWA TRAVEL |
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期日 | |
場所 | 岡山県倉敷市 |
参加費用(税込) | ツアーにより異なる |
ホームページ | TAKAHASHIGAWA TRAVEL |