倉敷中央病院院内学級担任へのインタビュー

2025年度に倉敷中央病院院内学級担任を務めている、倉敷市立倉敷東小学校の諏訪真由美(すわ まゆみ)先生と倉敷市立東中学校の山口結美子(やまぐち ゆみこ)先生に話を聞きました。
院内学級の設置目的を教えてください
諏訪(敬称略)
子どもたちの学びを止めないために、学習を保障することが目的です。
子どもたちは入院すると、多くの時間を病室で過ごすことになりますよね。
そのような子どもたちも、学校のある時間は院内学級に来てみんなと一緒に勉強したり休み時間にゲームをしたり、ときには調理実習や行事をしたりとみんなで楽しく過ごしています。
山口(敬称略)
中学校では、定期考査も実施するんですよ。生徒それぞれの学校から定期考査の問題を取り寄せておこないます。学校によってテスト期間も異なるので、その生徒のテスト期間に合わせて柔軟に定期考査を実施しています。
一人ではしんどいことも、周りの仲間も頑張っていると乗り越えられることがありますよね。それは、勉強も同じです。
児童生徒によって学習内容だけでなく学年もバラバラですが、仲間の存在は何事も前向きに取り組めるきっかけになっているようです。
子どもたちの在籍期間はどれくらいですか
諏訪
子どもによって入院期間が異なるので一概にどれくらいとは言えませんが、多くの子どもが1か月未満で元の学校に戻ります。
入院していても、治療の内容によっては数日間院内学級に登校できない子どもがいるので、放課後などにベッドサイドへ訪問することもあります。
2025年度の倉敷中央病院院内学級は、在籍児童生徒が0人になったことはありません。しかし、一時的にどちらかの学級に子どもがいない際には、私たち教員が在籍人数の多い学級の授業に入れるような柔軟な体制で運用しています。

4時間の授業中、子どもたちはずっと教室にいるのですか?
諏訪
子どもたちは治療を目的に入院しているので、治療が優先のスケジュールになっています。そのため、治療や検査、リハビリやシャワーなどの時間で授業を抜けることもよくあります。
その日のスケジュールは朝に病棟から引き継ぎの資料をもらうので、それを見ながら一人ひとりのスケジュールを立てるのが日課です。ただ、「お別れ会」などできるだけ多くの児童生徒に参加してほしいイベントもあるので、そのようなときは病院とも相談してスケジュールを確保してもらっています。
倉敷中央病院には小児科が主催しているイベントもたくさんあり、子どもたちも楽しんでいます。でも、院内学級のイベントのなかには子どもたちの発案でおこなうイベントもあるんです。そのような時間は入院患者からその年齢らしい子どもに戻れる時間なので、私たちも大事にしていますし、病院の皆さんにも大切にしてもらっています。
山口
子どもたちが学習できる時間は、通常の学校と比べて短くなってしまいます。そのようななかでも集中して学習や遊びに取り組む子どもたちはすごいなと、いつも感心させられます。
つらい治療があっても、院内学級での時間を楽しみにしてくれているんですよ。
通常の学校に通っていたら、夏休みや冬休みのような長期休暇は心待ちにしている期間ですよね。院内学級の子どもたちにとっては「学校がないつまらない期間」なのだそうです。
治療の合間に子どもに戻れる時間をここで過ごしてもらえるように、日々の指導にあたっています。

院内学級独自の教育活動もあるのですね
諏訪
子どもたちは、日々大変な治療を受けています。また、在籍校に通えなくなって学習が途切れてしまうことや治療に関することなど、さまざまな不安を抱えているのです。
院内学級に通ってくる時間は、患者の一人ではなく、児童生徒の一人として過ごせる、辛さを少しでも忘れられる時間だと捉えています。
入院生活が辛さや不安だけの思い出にならないよう、院内学級にきたからこそ経験できる活動を多々取り入れているのも、子どもたちに楽しい思い出をもって帰ってほしいからです。
特に小児科病棟は一般のかたの出入りが難しい病棟なので、美術館や大学の先生、ボランティアさんなどの院外の大人と触れ合える活動を積極的に取り入れています。

山口
ボランティアには、院内学級の卒業生もいるんですよ。
子どもたちにとっても保護者にとっても、長期入院を経た大人に出会う機会はなかなかありません。ボランティアとして来てくださる卒業生は、彼らにとって貴重なロールモデルです。
長期入院を経て元気な高校生や大人になれることを、ご自身の姿で示してくださるのは大きな希望なので、本当にありがたい存在です。
ボランティアを含め、病棟のスタッフや広報のみなさんなど、さまざまなかたが院内学級に携わってくれています。子どもたちの作品を常時院内で展示したり、年度末にはセントラルパーラーで特別展示をしたり、YouTubeやSNSでも子どもたちの活動を発信していただき、感謝しています。
子どもたちの活動範囲に制限はありますが、病院全体で子どもたちの頑張りを応援してくれる環境を実感できるのもまた院内学級ならではの経験です。
院内学級を担当していて大変なことはありますか
山口
在籍している子どもの学年も違えば使っている教科書や教材も異なりますし、定期考査の時期も違います。それらに柔軟に対応するのは大変ですね。
それから、院内学級は看護師さんなどの病院スタッフとの情報交換や子どもたちの在籍校との打ち合わせも必要なので、会議などの数も通常の学校と比べて多いです。
どれも、子どもたちが治療と並行して学習をして、元の学校へスムーズに戻るために必要な支援なので大切にしています。
諏訪
治療スケジュールや体調が日々異なるので、当日の朝にならないとその日のスケジュールが確定しないのは、これまで経験してきた学校での教育と異なると感じています。
また、子どもによって学習内容や進度が異なるので、基本的に学習が自学自習になりがちです。一人ずつのペースに合わせつつ、それぞれが「この時間は先生とじっくり勉強ができた」「先生や友達に褒めてもらえた」と主役になれる時間を作るようにしています。
これは院内学級でなくても必要な時間かもしれませんが、ここにいる子どもたちの多くは学習面でも在籍校に戻ってもついていけるか不安に感じているので精神面での支援も意識しています。
院内学級を担任していて印象的なエピソードがあれば教えてください
山口
毎朝病棟から院内学級に登校してくるとき、子どもたち同士がお互いの病室を訪ねて誘い合って登校している姿や、友達が学習に取り組む姿に触発されて学習を進める子どもたちを見ると仲間の存在がとても大きいのだなと改めて感じさせられますね。
学習自体は自主自習がメインですが、隣の席で頑張る友達の姿や休み時間に遊んだり「お寿司が食べたい」などの本音をこぼしあったりできる存在がいることは、なによりも励みになっているのだろうと思います。

諏訪
ある児童が、院内をまわって患者さんやスタッフを応援する活動をはじめたことがあるんです。院内中が彼のくれるエネルギーに元気をもらいました。
彼は、在籍校との絆が特に強い子で宿泊学習などの学校行事に彼の代わりにクラスメイトがバンダナをつけて参加してくれるなど、頻繁にオンラインで在籍校のクラスメイトとともに学習を進めていました。
だからこそ「元気になって退院するぞ」という気持ちが非常に強くて、応援してもらう心強さをよくわかっているからこそ、周りを巻き込んでみんなで元気になる雰囲気を作れたのだと思います。
彼がその場にいると、院内学級の子どもたちも院内のスタッフも明るい気持ちになれるんですよね。
入院生活はつらく不安も多いですが、そのなかでも自分たちで日々を楽しく過ごそうとする姿には、こちらのほうが元気や勇気をもらっていますよ。
今後、院内学級がどのような場所になってほしいですか
山口
院内学級への入学には、在籍校からの転校手続きが必要になります。
しかし、学校によっては転学ができず退学になってしまったり、復籍後に出席番号が最後になってしまったりするので、院内学級に転校したくても制度上難しい子どもがいるのが現状です。
教育現場でのICTが普及してオンラインでの学習保障も充実してきましたが、院内学級の良さはなによりも仲間とともに患者である自分を忘れて子どもに戻れる時間を過ごせることだと思っています。
院内学級を必要とするすべての子どもが、必要なタイミングで仲間とともに学べるよう制度面での整備がまだまだ必要です。
諏訪
院内学級で頑張る子どもたちがいることを、たくさんの人に知ってもらいたいです。
病気やけがは誰にでもあることなので、そのようなときに「院内学級」という制度があることを知っている人が一人でも増えることで、必要としている子どもたちが支援を受けられるようになってほしいと思います。

おわりに
テレビドラマやドキュメンタリー番組で院内学級の取り組みはたびたび取り上げられますが、倉敷市内で院内学級を支える人たちが数多くいることや子どもたちの前向きに過ごす日々が営まれていることは、まだまだ知られていません。
インタビューでは、諏訪先生も山口先生も子どもたちにとって院内学級でともに過ごす仲間の存在が、非常に大きなものだと何度も口にしていました。
入院していても、子どもたちが一人の子どもとして遊びや学びに取り組める院内学級。これからも必要とする一人でも多くの子どもに届く場所であってほしいものです。
院内学級のボランティアは、卒業生ではない一般のかたも、ボランティアには登録できるとのことです。興味のあるかたはぜひ、倉敷中央病院のボランティアコーディネーターにお声がけください。




















































