麦わらの産地として知られる浅口市鴨方町。
この町で60年以上、帽子を作り続けてきた製帽所があります。株式会社襟立製帽所(えりたてせいぼうしょ)です。

1960年(昭和35年)の創業以来、この地に根差しながら、時代の変化とともにものづくりの形を変えてきました。職人の手仕事から生まれる帽子には、産地の歴史といまを生きる感性が重なっています。
鴨方発の帽子づくりの文化と、その背景にある思いを取材しました。
記載されている内容は、2026年3月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
麦わらの産地で育まれた帽子づくり

鴨方は古くから麦の栽培が盛んな地域でした。農作業の合間に、余った麦の茎(麦わら)を使って帽子を編む文化が根付き、製帽は地域産業の一角を担っていたからです。
襟立製帽所は1960年、現在の代表取締役 襟立重樹(えりたて しげき)さんの父である先代が創業しました。当時は海外輸出向けの麦わら帽子を、地域の内職のかたがたと協力しながら生産していました。
しかし、安価な海外製品の流入により産地は縮小します。
多くの製帽所が姿を消すなか、襟立製帽所は大量生産から自社ブランドへと方向転換しました。

「作れるもの」ではなく、「自分たちが良いと思えるもの」を届ける。
その姿勢が、現在のものづくりの基盤となっています。
「地の利」を生かした素材選び
鴨方は、デニムの産地である井原市と倉敷市児島の中間に位置するエリアです。

この地の利(A geographical advantage)を生かし、地元のデニム生地や倉敷帆布を取り入れた帽子づくりもおこなわれています。素材メーカーと直接やり取りを重ね、オリジナル生地を用いた商品開発にも積極的に挑戦。

原材料は海外から調達することもありますが、加工は国内で一貫しておこなう体制を整えています。
テープ状の素材であるブレードの加工は愛知の産地と連携し、縫製は自社工房で実施。こうした積み重ねが、品質を支えています。
デザインが技術を磨く

襟立製帽所の特徴のひとつが、「デザインを起点にものづくりをおこなう」姿勢です。理想の形を先に描き、それをどう実現するかどうかを職人が考えていくのだそうです。
難しい形ほど技術が磨かれていくとのこと。ブレードと布を歪みなく縫い合わせる技術や、希少な専用ミシンの活用など、細部に工夫が凝らされています。

見た目の美しさだけでなく、かぶり心地や耐久性といった機能面も重視し、長く使い続けられる帽子づくりを目指しています。
デザイナーの感性が生む独自の形

デザイナー・森元ミカ(もりもと みか)さんの存在も欠かせません。
ホイップクリームを思わせる柔らかな曲線や、生地の耳(セルビッチ)を生かした花束のようなデザインなど、自由な発想が帽子に新しい表情を与えています。

「縫える範囲」で形を決めるのではなく、「描いた形をどう縫うか」を考える。デザインと技術が行き来する現場から、独自の帽子が生まれています。
地域とともに、これからへ
現在は、地元小学校の通学帽を製作する取り組みも進めています。地元の素材に触れながら育つ経験を、子どもたちに届けたいという思いから始まったものです。
2005年には倉敷美観地区に直営店を開設。直接お客さんの声を聞くことで、ものづくりのヒントを得る機会にもなっています。
鴨方発のブランドである「襟立製帽所」の襟立重樹さんに帽子への想いと今後の展望を聞きました。
株式会社襟立製帽所のデータ

| 団体名 | 株式会社襟立製帽所 |
|---|---|
| 業種 | 帽子製造、販売 |
| 代表者名 | 襟立重樹 |
| 設立年 | 1960年10月 |
| 住所 | 岡山県浅口市鴨方町鴨方160-8 |
| 電話番号 | 0865-44-5343 |
| ホームページ | ERITATE HAT Inc. | 株式会社 襟立製帽所 |












































