支配人の村上裕人さんと料理長の片岡清人さんにインタビュー
観光地、倉敷美観地区の真ん中にある「お食事処 鶴形」。
約280年の歴史がある建物で、旅館とお食事処を支える支配人の村上裕人さんと料理長の片岡清人さんに話を聞きました。
インタビューは2022年7月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
鶴形の建物について
建物の歴史について教えてください。
村上(敬称略)
1744年の江戸時代に建ちました。約280年前の建物で、現在のところ倉敷で2番目の古さです。
1番古い建物は鶴形のすぐ裏(本町通り)にある井上家住宅です。
鶴形はもともと油問屋でした。
旅館になったのは1970年で、おととし(2020年)の3月でちょうど50周年を迎えました。
建物に油問屋としての名残はあるのですか?
村上
油問屋としてより商家としての名残なら。
この建物が厨子2階造りになっています。
厨子とは物置、倉庫のことで、それが2階にあるという意味です。
倉庫ですから天井はなく、大きな梁はむき出しに。
窓は小さく、倉敷窓になっていて、空気の入れ替えや光を入れる役割があります。
2階に物品を運ぶため1階の玄関に、昔は階段があったようです。
階段を取り付けていた南京錠だけは残っています。しかし私たちは階段を見たことはありません。
通りからお食事処へ入る入り口には3段の段差があります。
さらに奥の蔵を改装した客室へ入るときはもう3段あります。
ですから、かなり貴重なものを蔵に納めていたのだろうと。
以前は高梁川が東高梁川と西高梁川の2本ありました。
鶴形の近くに川が流れていて、当時はよく洪水があったようです。
大原美術館は入り口前に7段の段差がありますよね。緑御殿もあがっています。
緑御殿は有隣荘の別名。有隣荘は大原孫三郎が建てた大原家の旧別邸です。
昔のかたは水への意識が高かったのでしょうね。
大切なものは奥へ、高いほうへ置いていたようです。
鶴形の料理について
名物の鯛茶漬けについて教えてください。
村上
鯛茶漬けのたれは、醤油とみりんとゴマをベースに合わせています。
たれは2日寝かせて絡めます。
実は、ここまでしかたれのことを知りません。
ついこの間、私がカロリー計算をして取引先にお伝えしようと思ったところ、NGが出まして。
たれのレシピは門外不出なんです。
たれのレシピは一部の料理人さんしか知らず、料理長が代々受け継いでいるようです。
片岡さんは最近料理長に就任されましたが、受け継いでいますか?
片岡(敬称略)
受け継いでいます。
すき焼きの割り下もこだわっていまして、こちらのレシピも門外不出です。
村上
すき焼き、この匂いに苦しめられるんですよね。すごくいい匂いがしてお腹がすいてしまって。スタッフにとっては辛いんです。
外国人客にも人気
観光地にありますけれど、お食事されるのは観光客が多いですか?
村上
お客様の95パーセントは観光客のかたでしょうか。地元客は少ないようです。
コロナ以前は外国人観光客も多くお越しくださいました。
圧倒的にヨーロッパのかたが多く、アジアのかたは少なかったです。
特に瀬戸内国際芸術祭のシーズンは、芸術や美術に興味があるフランスのかたが多いですね。
瀬戸内国際芸術祭は4年に1度開かれます。2022年に開催予定。
外国人のかたもお茶漬けを召し上がります。お箸にご興味があるようです。
宿泊のかたにもお料理をお出ししているのですが、わざわざ着物に着替えてお食事なさる外国人のお客様がいらっしゃいます。
背の高いかたもいらっしゃるんですが、長い足を曲げてでも座敷で召し上がられるかたも。
お食事処の場所以外でも鶴形の食事が話題になったようですが。
村上
2018年1月にJALの国内線の機内食を提供しました。メニューすべてを監修させていただきました。
2000年には天皇陛下が井原へお越しになられたときに昼食をご提供いたしました。鶴形でお作りし、井原へお運びいたしました。
他には、2017年の将棋の第75期名人戦がここ鶴形で行われまして。佐藤名人と稲葉八段の対局でしたね。我々は昼食のご提供をいたしました。
鶴形の目指しているもの
今後の展望を教えてください。
村上
目指しているところがありまして、総支配人からは「凛とした旅館にしなさい」と。
かみ砕くと「きれいな旅館」を目指しています。
我々の思っている「きれい」は、掃除が行き届いているだけでなく、お料理や器の使いかた、お客様に対しての所作も。
すべてにおいて「きれい」を目指しております。
グループの倉敷国際ホテルとの連携もあるのですか?
村上
私どもグループは、倉敷国際ホテルとレストラン亀遊亭の洋食も、そして鶴形の和食もあるのがひとつの強みです。
たとえばご宴会の料理ですと最初から最後まですべて洋食だけより、途中に和食の料理があるほうが喜ばれる場合もあります。
そのため鶴形で和食をお造りして、倉敷国際ホテルへお運びすることも。
宿泊ですと、和食をご希望のかたへ倉敷国際ホテルに泊って、夕食を鶴形で召し上がっていただくプランもありますし。
逆に、鶴形の朝食付きプランの宿泊者に夕食は倉敷国際ホテルや亀遊亭をご案内する場合もあります。
今後はさらに連携をとって、朝食で倉敷国際ホテルの洋食バイキングより和食がいいかたは、鶴形にお越しくださるようになれば。
今後実現できればと思っています。
おわりに
倉敷で2番目に古い建物「お食事処 鶴形」。倉敷の歴史を感じられる特別な空間での食事は格別ではないでしょうか。
ごく一部の料理人しか知らない秘伝のたれ、割り下を使った料理も気になりますよね。
倉敷美観地区の散策もあわせて鶴形の料理を食べに行きませんか?
お食事処 鶴形のデータ
名前 | お食事処 鶴形 |
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住所 | 岡山県倉敷市中央町1丁目3番15号 |
電話番号 | 086-424-1635 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 午前11時~午後2時 |
定休日 | 月 |
支払い方法 |
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予約の可否 | 可 |
座席 | 29席(カウンター:5 、4人掛けテーブル数:4、長テーブル:1) |
タバコ | 完全禁煙 |
トイレ | 洋式トイレ |
子育て | |
バリアフリー | |
ホームページ | 料理旅館 鶴形 |